『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』(2月20日発売)
『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』(2月20日発売)

7月16日(木)、朝日新聞出版より刊行の東京新聞記者・片山夏子著『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』が、第42回 講談社 本田靖春ノンフィクション賞を受賞しました。(*吉田千亜著『孤塁 双葉郡消防士たちの3.11』(岩波書店)とW受賞です)


<受賞コメント>
目に見えぬウイルス新型コロナと世界が闘う中で、東京電力福島第一原発事故から10年目となった今も、作業員たちは目に見えぬ放射線や放射性物質と日々闘い続けています。
コロナ禍は福島第一原発にも影響し、一時は最前線の防護服すら代替品となりました。
それでも「何とかしたい」という思いの作業員たちによって、廃炉に向かって進んでいます。
事故から10年目。そんな年なのに忘れられたかのように報道されない福島の人たち。そういう時期に、拙著が受賞したことを嬉しく思います。
――片山夏子


■選考委員
魚住昭、後藤正治、最相葉月、中沢新一(五十音順・敬称略)

■最終候補作品(五十音順、敬称略)
◎片山夏子『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』(朝日新聞出版)
◎竹中明洋『殺しの柳川 日韓戦後秘史』(小学館)
◎常井健一さん『無敗の男 中村喜四郎 全告白』(文藝春秋)
◎濱野ちひろ『聖なるズー』(集英社)
◎森功『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』(文藝春秋)
◎吉田千亜『弧塁 双葉郡消防士たちの 3・11』(岩波書店)

■講談社 本田靖春ノンフィクション賞とは
講談社主催による、1979年創始されたノンフィクションを対象とした文学賞。「講談社ノンフィクション賞」としていたが、第41回(2019年)より本田靖春の名を冠し、現在のとおりに改称。過去受賞者に森達也氏、梯久美子氏、安田浩一氏などがいる。

■内容紹介
水素爆発が何度も発生し、高い被ばくをする危険な場所で、命を賭してまで働くのはなぜなのか――。
2011年3月に起こった福島第一原発事故当初から、片山記者が抱えてきた疑問を胸に、作業員たちへの取材がはじまった。

【終わらない廃炉、イチエフ作業員たちの声】
「誰かがやらなきゃらないなら俺が……」(47歳・下請け作業員)
「ゼネコンはいいなあ。俺らは原発以外仕事がないから、使い捨て」(35歳・カズマさん)
「自分は“高線量要員"だった」(45歳・下請け作業員)
「作業員が英雄視されたのなんて、事故後のほんの一瞬」(56歳・ヤマさん)
「地元では、東電社員になることは憧れだった」(30代・下請け作業員)

高線量下で日当6500円、7次請け、8次請け……原発の多重下請け構造、政府の事故収束宣言とともに悪化する作業員たちの待遇、1日400トン生まれる汚染水との闘い、作業員の被ばく隠し、がん発病と訴訟……。
箝口令が敷かれた作業員たちを、東京新聞記者が9年にわたり取材して見えてきた、福島第一をめぐる真実。

●解説 「小文字」を集めたルポルタージュ―― 青木理

■著者プロフィール
片山夏子(かたやま・なつこ):中日新聞東京本社(「東京新聞」)の記者。大学卒業後、化粧品会社の営業、ニートを経て、埼玉新聞で主に埼玉県警担当。出生前診断の連載「いのち生まれる時に」でファルマシア・アップジョン医学記事賞の特別賞受賞。中日新聞入社後、東京社会部遊軍、警視庁を担当。特別報道部では修復腎(病気腎)移植など臓器移植問題や、原発作業員の労災問題などを取材。名古屋社会部の時に2011年3月11日の東日本大震災が起きる。震災翌日から、東京電力や原子力安全・保安院などを取材。同年8月から東京社会部で、主に東京電力福島第一原発で働く作業員の取材を担当。作業員の事故収束作業や日常、家族への思いなどを綴った「ふくしま作業員日誌」を連載中。2020 年、同連載が評価され、「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」大賞受賞。現在、特別報道部所属。