藤岡陽子さんの『メイド・イン京都』が10月28日(木)、第9回京都本大賞を受賞しました。作品は一人の女性が生き方に迷いつつ、京都でものづくりの面白さと、様々な人々に出会い、大きく成長していく様を描いています。同時に藤岡氏自身も京都で生まれ育ち、謂わば生身で京都の文化を受け止めてきた生粋の“京都人”。柔らかくもちょっぴり怖い、そんな“京都人”たちに対するリアルな表現が、地元からも熱烈に支持されて今回の受賞となりました。
本年度の本屋大賞第11位の感動作『きのうのオレンジ』、ひとりの女性の仕事と生き様を丹念に追ったロングセラー『手のひらの音符』、感涙の医療小説『満天のゴール』、中学受験に挑む少年と家族の戦いを描いた『金の角持つ子どもたち』……「見えない未来に向かって挑戦する」数々の話題作で今、もっとも注目される著者による『メイド・イン京都』!
京都本大賞は京都府内の書店・出版取次・出版社などで構成された京都本大賞実行委員会の主催で、過去1年間に出版された作品の中で京都府を舞台にしたものの中から実行委員会が選んだ最終ノミネート作のうち、最も地元の人に読んでほしい作品を、書店員および一般読者の投票で決定します。これまで岡崎琢磨さん、森見登美彦さん、原田マハさんなどそうそうたる作家の方々が受賞されています。
とりわけ今回、主人公の美咲を取り巻く“京都人”たちの、ある意味柔らかくも辛辣な行動や発言が生々しいと評価されました。生まれも育ちも京都・洛西、現在も京都府在住の藤岡さんも毎年京都本大賞を書店等で見ていたそうですが、今回の執筆に当たってはまったく意識になかったとのこと。「私は無縁だと思っていましたし、もし意識していたら“京都人”に対する表現が少し鈍ってしまっただろうと思います」とのこと、まさに無欲の勝利です。
さらに物語の主人公である美咲は、藤岡さんのご友人で実際にアパレルを起業し、制作をされている方がモデルなので、リアルな起業シミュレーションとして読むこともできます。
京都本大賞実行委員長の洞本昌哉氏(ふたば書房代表取締役)も「最近、何を読もうか迷っている京都人へ自信を持ってお薦めします」とツイート。京都人のあなたも、そうでないあなたも、ぜひお手に取ってお読みください。
読んだ後に、前を向こうという気持ちになれる、そして外から見れば複雑な“京都人”を理解するための一助となる……そんな一冊です。
メイド・イン京都
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