「小説トリッパー」23年春季号「季刊ブックレビュー マイノリティ×マイノリティの到達点 『黄色い家』川上未映子(中央公論新社)」につきまして

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「小説トリッパー」2023年春季号に掲載された鴻巣友季子さんの「季刊ブックレビュー」で取り上げた、川上未映子著『黄色い家』の登場人物の職業について、編集部より付記があります。
該当箇所は199ページ2段目、終わりから8行目「彼女たちのしたことは善いか悪いかといえば、悪い。年をごまかして風俗業に就き、スナックで働き、正真正銘の犯罪にも手を染めた」のなかの「風俗業」という言葉です。ここでの「風俗業」は登場人物の一人が働いていた「キャバクラ」を指し、「年をごまかして」は当時未成年にあたる女性たちが水商売につくために年齢を偽ったことを指します。

「風俗業」とは「客に遊興・飲食などをさせる営業の総称。待合・料理店・ダンスホール・バー・パチンコ屋など」を指し、そこには「キャバクラ」も含まれることから言葉の使用として誤りではなく、鴻巣さんや校閲者に責任はございません。しかしながら風俗業に含まれるはずの「スナック」と切り離して言及されていることから、これから作品に触れる読者にたいして「性風俗業」を想起させる可能性があります。この点については、編集部が考慮すべきでした。

『黄色い家』は、主人公たちが自分の置かれた環境の中でサバイブしながら、どのような職業を選択したか、選択せざるを得なかったかということが、重要な要素となっている小説であることから、この文章を公表いたしました。
すでに書評をお読みになってくださった方々も、これから書評をお読みになる方々も、この点をふまえてご高覧いただけますと有り難く存じます。編集部としましては、今後文章表現に対して、より慎重に向き合っていく所存です。


2023年3月22日
朝日新聞出版「小説トリッパー」編集長
山田京子