2012年11月、中国共産党の代表約2300人が北京に結集し、5年に1度の党大会を開催。毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤に続く「第5世代」の習近平体制が発足した。しかし、10年ぶりの最高指導部の交代は、壮大な規模の「密室の合議」でとりおこなわれた――。1カ月近くも開催が遅れた党大会、その直前に忽然と姿を消した習近平、さまざまな憶測が憶測を呼び、指導部の混乱が表面化することになった最大の理由は「天安門事件以来、最大の政治事件」といわれた薄熙来の事件だった。「いつか天子(皇帝)になる」。野心を隠さず、党最高指導部入りが有力視された異色の存在は、なぜ完全失脚することになったのか。この事件を突破口に、巨万の富を築く高官子弟の優雅な暮らしぶりや、権力をほしいままにする党幹部たちの実態に迫るとともに、軍のトップ・党中央軍事委員会主席の座をめぐっての江沢民を道連れにした胡錦濤の決断など、閉鎖国家の内幕に切り込む報道は、まさに生きた現代史。カリスマなき大国の実像を知るノンフィクションの新たな金字塔。