大砲など圧倒的な近代戦力で迫る西欧に開国せざるを得なかった幕末日本。鎖国中とはいえ、蘭学に目を開く蘭癖大名のネットワークによりごくわずかの輸入品から、科学技術は意外にも発達していた。開国後、後発工業国として出発した日本は、いかにして先進国の技術を追い、はては日清・日露・二つの世界大戦に参戦するに至ったのか。紡績、軽工業、製鉄、造船など産業技術の移転、学習、内実化の諸段階を追う。はたして日本は産業革命を経て近代技術を手にしたのか。技術の世界史から問い直し、敗戦の焼け野原を経てなお、高度経済成長を開始する日本の近代技術の特質を考える。