かつて日本のみに横行していた「4大文明」史観。じつは南北アメリカの2大文明を加えた「6大文明」が1次文明として誕生していた。
太平洋の東端では、石器を用いるメソアメリカ・アンデスの2大文明が、16世紀にスペインに征服されるまで、熱帯、高地、砂漠などさまざまな環境で都市、王国を築き、盛衰を重ねていた。一方西端では、後期旧石器時代に海を越え琉球列島にたどり着いた人類が、デリケートな島嶼環境で動物を絶滅に追い込むことなく狩猟採集を続け、11世紀まで農耕を選択しなかった。
近年、日本の水月湖で、1年ごとの環境変化が正確にわかる年縞が見つかり、世界標準としての使用が可能と認定された。この年縞の解析と詳細な発掘調査で、マヤ、ナスカ、琉球での環境変化と人類の対応がわかってきた。
大河のほとりの乾燥地帯で農耕を開始し文明が発展したという、従来の文明史観では解けない、環太平洋の古代文明。環境変化にどう対応し、何が原因で衰亡したのか。西洋中心史観に環太平洋地域も加えた、バランスのとれた「真の世界史」から、環境との共生を学ぶ。