還暦間近の俺は、若い頃は絶対に相容れないと思っていた父親のため、仕事帰りにスーパーでとんかつを買い、「さっぱりしたなあ」の言葉を聞きたくて入浴介助を続けた――。
介護をする毎日、止めようもなく過ぎてゆく時間とその中でふいに訪れる僥倖のような瞬間。いい歳をした大人が、親を看取るとはどういうことか。父親の生きた昭和という時代はなんだったのか。
透徹した目線で静かに綴られる、ふたりの男が過ごした一年半の“物語”。
【解説・関川夏央】
介護に関わっている人だけでなく、すべての日本人に読んでほしい一冊が待望の文庫化!