ポール・オースターが絶賛した『インディアナ、インディアナ』(朝日新聞出版、2006)につづく、柴田元幸が翻訳を熱望するレアード・ハントの長編翻訳第二弾。南北戦争以前、ケンタッキーの山の中に住む、横暴な男。そこに騙されて連れてこられた一人の女性が二人の奴隷娘たちと暮らし始めると……。雲の女王になった話、黒い樹の皮の話、濡れたパイだねの話、タマネギの話など、密度の濃い語りですすむ、優しくて残酷で詩的で容赦のない小説。
●小川洋子さんの推薦のことば
誰かが語っている。
あふれる暴力を露にするための呪文を。
その呪いを解くための祈りを。
耳を澄ませたまま、私はただ立ち尽くすしかない。
世界のありようを声の響きだけであぶり出す、
あなたは誰だ?