ハプスブルク帝国最後の皇太子の波乱万丈の生涯を、豊富な史料と本人のインタビューで明らかにする。ナチスドイツによるオーストリア併合に際しては、傀儡となることを拒んだため、ヒトラーに執拗に命を狙われた。欧州からアメリカ大陸へと亡命の旅を重ねながら祖国復興に奔走、大戦後は英米仏を巻き込み、ソ連に対抗してオーストリアを西側陣営にとどめることに尽力した。冷戦構造の最前線、国境の町ハンガリーのショプロンでハプニング的にヨーロッパ・ピクニックを企画するなど、冷戦終結、欧州統合にも一定の影響を及ぼした。祖国での知られざる、戦いに次ぐ戦いの生涯をただどれば、もう一つの欧州現代史が浮かび上がる。