新聞連載当初の「サザエさん」から愛読していた著者が、作者長谷川町子のかつての住まいを訪れ、小学生時代の親友や西日本新聞社勤務時代の上司に話を聞き、長谷川町子の人生を辿りながら、戦後の日本の生活や女性のあり方がどのように変化していったかを紐解く。
一見、「昭和の家族の代表」のように保守的に見える磯野家ではあるが、その中にフェミニズム視点がある、と著者は説く。いわゆる「九州男子」のような男が主流の時代に、そのような威張り散らす男を常に否定的に描いた。夫を婿養子に迎え、「嫁」ではなく「妻」としてのびのびとご近所と付き合い、時には仕事をしながら生活を維持していく。だからこそ、女性作家による主婦を中心とした生活漫画が新聞紙面に28年にわたって連載できたのだ、と。その他、新しい男性の姿としてのカツオ、がんばらない波平、実力者フネ、いじわるばあさんの「老い」などの章あり。
「サザエさん」の中の出来事と戦後史を絡めているため、とても分かりやすく読みやすい。昭和の生活が分かると共に、長谷川町子のことも身近に感じられる一冊。
長谷川町子さんのカバーイラスト&挿絵も多数収録。
西日本新聞社整理部絵画係に勤めていた際に描いていた貴重なイラストも掲載している。