大宅壮一ノンフィクション賞&読売文学賞受賞の“旅する作家”が、旅せず綴った珠玉のエッセイ。
安定、予定、目標という選択肢を捨て、たった一つ、「自由」を選んだだけのつもりだった。
しかしその結果は、生きる技量を失い、途方に暮れる自分の姿。
「自由」という暴君が、いつしか人生を食いつぶし始めた……。
さらに追い打ちをかけたのが、自分を支えてくれた愛猫たちの相次ぐ死。
もう無理だ。
逃げよう。
2007年1月、一人暮らしに敗北し、実家に戻ることを決断する――。
本書は、生き方を見失った著者が、故郷の戸越銀座に戻り、老いていく両親や愛猫たち、商店街のお年寄りたちとの交流のなかで生きる力を取り戻そうと葛藤しながら、変わっていく自分を見つめた、6年半の日々の記録である。
【目次より】
まえがき 自由からの逃走
第一章 とまどいだらけの地元暮らし
第二章 私が子どもだった頃
第三章 あまのじゃくの道
第四章 そこにはいつも、猫がいた
第五章 戸越銀座が教えてくれたこと
あとがき
文庫のためのあとがき 敗者の兵法
解説 平松洋子