加藤登紀子は第二次世界大戦の終わる1年8カ月前に中国のハルビン市で生まれた。多くのロシア人の音楽を聴いて育ち、戦後の混乱を生き抜いた母、兄、姉と共に日本に引き揚げた。
東大在学中に歌手デビュー、1968年卒業の時、卒業式をボイコットした学生たちに加わってデモに参加。当時の学生運動のリーダーだった藤本敏夫と出逢い、人生を共にした。
2018年は、世界がベトナム反戦や民主化で揺れた68年から半世紀。本書は加藤登紀子自身が、出生から、引き揚げ、歌手デビュー、結婚、現在に至るまでの波乱の人生を、歌との出会いを通して描く書き下ろし自伝。
代表作「知床旅情」にも「百万本のバラ」にも、運命的な時代の熱いメッセージが込められている。アニメーション映画「紅の豚」でジーナとして歌った「さくらんぼの実る頃」、ベトナムの歌「美しい昔」や、韓国の「鳳仙花」、反戦歌「花はどこへ行った」など歴史的な歌の背景のエピソードは、貴重な記録でもある。