人口減少に加えてマイナス金利の長期化で収益が悪化、地銀の経営はますます追い込まれている。生き残るためには、他行との経営統合と、それに続く効率化しか道はないが、全国105行の地銀・第二地銀の動きは鈍い。そんな中、約2年前、『地方銀行消滅』(朝日新書)で金融界に衝撃を与えた銀行ウオッチャー、津田倫男氏が、まったく新しい視点で地銀再編に再びメスを入れた。それこそが『地銀・信金 ダブル消滅』(朝日新書)である。
タイトルが示す通り、今回は地銀に加えて「信用金庫」も対象にした。信金は頻繁に合併を繰り返しているが、今後は地域を越えて再編される可能性があり、なおかつ、地域金融機関の一翼として、いよいよ地銀と同列に論じなければならない時期が来たからだ。
今回も、具体的な銀行名付きでの再編予想が満載されている。予想は2段階だ。
まずは従来型で、銀行がある地域を重視したもの。「同一県内」「近隣型」「同一地方型」の三つの視点で北から南までを眺めていく。銀行の合併予想が、その戦略や根拠とともに次々に描かれる。ページを繰るたびに驚きが走る。
もう一つは「新型再編」。津田氏は、金融マンの常識を超えた視点で再編をとらえることでこそ、地域金融機関の正しい「未来予想図」が描けるとする。視点は同じく三つ、すなわち「広域」「国際」「業態超越」だ。もはや地域で固まる必要はなく、メガに続いてアジア進出も十分考えられる。そして、銀行と信金が業態を超えて合併することすら可能性があるとする。有力信金が多い大都市部を中心に、である。まさに奇想天外、驚天動地だ。
その上で、列島全体の「再編チャート図」が示されるのだ。大胆な発想と組み合わせの意外さが、圧倒的迫力で迫ってくる。
見逃せない分析もなされている。地銀の動きが鈍いのは、福岡の「ふくおかFG(フィナンシャル・グループ)」と長崎の十八銀行との経営統合が、公正取引委員会によって阻まれたままであることが大きい(2018年4月27日現在)。再編を進めたい金融庁と公取委が「対立」している格好だが、両者の戦略や考え方の違いが深く論じられているのだ。
まさに、地銀、信金など地域金融機関の関係者はもちろん、地域経済の今後を知りたいすべての人にとって必読である。「5年後」の地域金融の姿が、本書の中にすべて描かれている。