戦争末期の福岡に、特攻の帰還兵が収容された「振武寮」という施設があった。
外出は一切禁止、「卑怯者、死んだ連中に申し訳ないと思わないのか」「そんなに死ぬのがいやか」など、屈辱的な言葉を連日投げかけられ、竹刀で滅多打ちにされる。幽閉生活の中で、兵士たちは「自分たち特攻帰還者は生きていてはいけない存在なのだ、次は絶対に死んでみせる」、そう思わせるための精神教育をする施設である。
著者の大貫健一郎氏は、ここに実際に幽閉されていた特攻隊員の生き残りの一人である。特攻隊員として出撃するまでの苦しみ、将来の夢を持ったまま亡くなった戦友たちの無念、特攻作戦そのものへの疑問。そして戦後を生き続ける苦悩。決して美化してはいけない、「特攻」を経験した元兵士の貴重な記録。
二本のテレビドキュメンタリー(ETV特集『許されなかった帰還〜福岡・特攻隊振武寮〜』、NHKスペシャル『学徒兵 許されざる帰還〜陸軍特攻隊の悲劇〜』)の書籍化。