戦後70余年、動くことのなかった北方領土をめぐる日露交渉が、2018年に入り、新展開を見せています。
シンガポール、ブエノスアイレスでのプーチン・ロシア大統領と安倍総理大臣との首脳会談を経て、1956年の日ソ共同宣言に基づく新たな枠組みの中で始まった今回の交渉は、「返還か、引き渡しか」「主権か、施政権か」をめぐり、歴史認識と法的立場で揺さぶりをかけてくるロシア側の戦術によって、想像以上の激しい外交的駆け引きへと展開しています。
4島返還、2島先行返還、2島プラスアルファという選択肢の中で、日本はどこを落としどころにしていくのでしょうか。そもそも63年前の日ソ交渉とはどのようなものだったのでしょうか。
本書の著者、故・松本俊一(まつもとしゅんいち)氏は、交渉の全権として、1956年10月、鳩山一郎、河野一郎両氏とともに日ソ共同宣言に調印するまで、終始、外交交渉の矢面に立った人物です。松本氏が書き残した生々しい記録の中には、「あまりに機微に触れる内容なので、公電にしなかったのかもしれない」とささやかれる、外務省に存在しない文書も含まれ、第一級のノンフィクションとして、歴史の証言として、きわめて貴重な一冊となっております。
今回新たに、日露両政府が共同で作成した資料集(1992年版と2001年版)を完全収録。今後この資料に基づいて交渉は進められることが予想されます。