志だけでは、絶対に勝てない――
「唯才主義」の曹操、「情義と志」の劉備、「地縁血縁」の孫権。
なぜ、魏が勝ち、蜀は敗れ、呉は自滅したのか?
国のかたち、制度、社会が大きく変わるなかで、時に熱く、時に冷酷な三国時代の人事。
それぞれが理想を抱き、乱世を生きた英雄たちの変革期の「身のふり方」に迫る。
小説『三国志演義』において、読者の心をたぎらせるのは、「桃園の誓い」や「三顧の礼」にみられる英雄たちの熱き志やそのエピソードである。一方で、正史『三国志』があらわす当時は、いわば戦争の時代であり、権謀術数を用いての純然たる勝ち負けの世界でもある。ゲームや小説においては一騎打ちなどがハイライトになりうるが、実際には、変革期の乱世を生き延びるためのどろ臭い知恵、人事における英雄たちのせめぎあいがあった。本書では、当時の人事制度や人脈のつくり方を紐解き、魏・蜀・呉それぞれの人材登用の特徴をつぶさに描く。
【第一章 人脈のつくり方】
1.情義
2.学閥
3.故吏
4.地縁
5.血縁
6.評価
【第二章 国のしくみ】
1.官と吏
2.三公と丞相
3.九卿と尚書・宦官
4.軍府と都督
5.地方秩序の維持
6.出世の階梯
【第三章 時代を変革する――曹魏】
1.志を育んだ人脈
2.曹操の人事、その深淵
3.時代を先取る
4.人事基準の変更
5.儒教経義の根底にある「孝」との格闘
6.守成の難しさ
【第四章 伝統を受け継ぐ――蜀漢】
1.劉備の情義
2.人脈を超える志
3.君自ら取るべし
4.地縁を超えて
5.諸葛亮の志
6.理念に殉ずる
【第五章 地域と生きる――孫呉】
1.六朝の始まりとしての呉
2.情義と義兄弟
3.志を活かす人脈
4.名士とのせめぎあい
5.江東のために
6.地域への傾斜
【第六章 組織を制する――西晉】
1.司馬氏の人脈と制度づくり
2.人事制度改革
3.律令体制に向けて
【終章 人事・人脈からみた三国志】
引用・参考文献
★附表1 後漢・曹魏百官表
★附表2 三國政権の人的構成