皇室史上初めて病院で出産された美智子妃。戦後はじめての「皇子の誕生」という国民的慶事は、医師たちにとっては絶対に失敗の許されない一大プロジェクトでもあった。三人の皇子誕生の舞台裏を、そのすべてに立ち会った宮内庁病院の医師が残したメモをもとに詳細にレポートする。
美智子妃が初めて出産されたのは、エコーなど、現代では当たり前の医療器具がまだ開発途中で、未熟児の死亡率が依然として高かった昭和35年。しかも、場所は当時「ボロ小屋」と呼ばれることもあるほど古びた施設であった宮内庁病院だった。万全の態勢で出産を迎えるため、東宮・宮内庁病院・東大の医師たちで構成された医師団の奔走が始まる。表には決してあらわれず、黒子に徹した医師たちの知られざる歴史を大宅賞作家がレポートする。
(講談社文庫『皇太子誕生』を改題)
目次
プロローグ
第一章 世紀の慶事
第二章 プロジェクト始動
第三章 目崎鑛太の憂鬱
第四章 深夜の危機
第五章 浩宮誕生
第六章 美智子妃とトランジスタ
第七章 「分娩はみせものではない」
第八章 桜貝の君
第九章 母の笑顔
エピローグ