パレスチナは世界の縮図だ。
この地が抱える問題は国際社会がつくり出し、現在に至るまで70年も解決できないまま、多くの難民や占領下で生きる人々の存在が見過ごされてきた。
しかし、パレスチナで起きていることは、世界の片隅で行われている局地紛争ではなく、単なるイスラエルとの国家間対立でもない。それは、宗教、民族、ナショナリティなどが多次元的に絡み合い、希望と絶望、善と悪、生と死が揺れ動く、わたしたちが生きる世界そのものなのである。
2018年5月、米大使館の移転が波紋を呼んだ。日本でも大きなニュースとなり、関心も高まっている。だが、そこに暮らす人々の情報はあまりに少ない。
本書は、パレスチナ人の生活をローアングルな視点で捉え、現地の実態をルポで紹介。空爆と隣り合わせで生きる人々がメインとなるが、東北被災地との友情を深める子どもたち、IT起業した若い女性、ミュージシャンといった、知られざる一面も取り上げ、重層性をもつパレスチナの今を描く。