国民的スターって、今、いないよな。
…… いや、もう、いらないのかも。
誰もが発信者となった今、プロとアマチュアの境界線は消えた。
新時代の「スター」は誰だ。
作家生活10周年記念作品〔白版〕
「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」
新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した立原尚吾と大土井紘。ふたりは大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。
受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応――
作品の質や価値は何をもって測られるのか。
私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。
朝日新聞連載、デビュー10年にして放つ新世代の長編小説。
【書店員さんからの熱い感想が届きました!】
集合体から個人の時代、変化への対応力が求められているいま、稀代の人気作家が問いかけるものとは一体なんだろう。
いわゆる業界ものではあるが熱き思いは圧倒的な普遍性がある。
全編から伝わるのは表現者としての揺るぎない信念だ。
著者の決意と覚悟も伝わるこの物語はまさに節目に相応しい。
無力感、虚しさ、諦念。現実の空気をありのままに再現。
理不尽な世界と真っ直ぐ対峙するこの作家の視線は間違いない。
「何かが足りない今」の欠けたピースを見事に埋めてくれるしっかりと地に足のついた雄弁な一冊だ!素晴らしい!
(ブックジャーナリスト 内田剛)
認めない為の理由を探す。わたしたちは多様性を叫びながら、それをやめることができない。誰より自分が一番息苦しくなると分かっているのに。真逆の主人公2人がそれぞれに戦い見出した今はまだ小さな光。この先わたしは、その光を道しるべの様に何度も思い出すだろう。沢山のものやことが溢れた今、溺れてしまいそうな人にこそ届いて欲しい。
(ジュンク堂書店吉祥寺店 田村知世)
それぞれの苦悩と葛藤。その末に行き着いた思いは、決して軽々しく読み流せるようなものではない。彼らと対峙しながら、彼らの思いを吟味しながら、深く心に刻みつけるように読んで欲しいと思える作品だ。
(幕張蔦屋書店 後藤美由紀)
最初っから最後まで映画。映画、映画、映画。ホントに映画バカばっかり。
でも、映画製作程にチームワークを試され、人と人がぶつかり合う作業ってないんじゃないかと思わされた。
最っ高に熱い青春が輝いている瞬間って、周りが見えなくなってしまう位に、一つの物事に打ち込んでいる時なんだろうな。
尚吾と紘の情熱が眩しすぎて羨ましいぞ。
(文教堂 青柳 将人)
映画、ドラマ、ドキュメンタリー、バラエティ、CM、動画の配信の形が大きく変わって来ていて。タダで、または安く身近にいつでも観られる、ネットフリックスなどの配信、You Tubeが一部の物ではなく、既に主要になってきているのを実感しています。
この小説の主人公二人は、考え方も違うし進んだ道も違うけど、自分の理想とするものへ妥協じゃなくこだわりぬくところは一緒だなと思いました。
相手にしっとしたり、自分が良質のだと思うものにこだわり続けうまくいかなく苦しむ、そして努力しても結果がついてこないのも事実。でもこの苦しみこそ大切で、もっと私も若い頃にこんなに真剣に向き合いたかったなあと羨ましくもあります。
確かに理想どおりに二人がこの先スターになるかはわからないですが、どこの媒体にでてもここは誇れるというものを見失わないなら、スターになれなくても悔いない生き方ができるんじゃないでしょうか。
また、受けての私たちとしては、良いものをたとえ高くてもしっかり受けとめる人間でありたいと思います。
(ジュンク堂書店三宮店 三瓶)
斜陽産業とかオワコンとか、自分がかかわっている世界についてそういう風に言われること、それを完全に否定できないこと。今まで通りでは成り立っていかないその中でどう生き延びていくか考えること、そういうあれこれが若い視点で描かれる。
その世界にあこがれて、その世界で生きていくことを夢見てもがく二人。学生時代に映画祭でグランプリを取る、という「栄光」を背負い、そこからどう進んでいくか、を試される日々。
伝統的な手法を守る名監督の下でまっすぐ進み続けようとする尚吾と、時代が求めるものに合わせYouTubeでの表現に進んでいく紘。
それぞれの背景や生活環境、そして求めるもの信じるもの、の対比が、二人の現在を浮き上がらせる。
「学生から就職」の夢と現実と葛藤という流れは朝井リョウらしくリアル。今回もYouTubeやオンラインサロンの現状をからめて「古き良き時代」と「新時代」のコンテンツ変化が古いアタマで読んでもわかりやすい。
(精文館書店中島新町店 久田)
価値観がコロコロと変わる世の中では、一途に信念を持って生きる人はとても苦しいことでしょう。揺らぐ気持ちも、他人を否定する気持ちも、その副産物なのだから。それでもいつでも希望は隣にいてくれて、回り道でもきっと明日は光が見えてくる。大丈夫だよ。迷うあなたへ。ひたむきに想いを貫くことの尊さと素晴らしさを。
(蔦屋書店 熊谷店 加藤京子)
SNSが普及し、情報が飽和する時代で、何を求め、何のために夢を追いかけるのか。
誰でも気軽に発信できるようになった今、ずっと感じていた違和感を朝井リョウはみごとに形にしてくれました。小説ではなく新時代のドキュメントを見ているよう。
「YouTuberになりたい!」という人も「YouTuberとか(笑)」という人もどちらも共感できるすごい本。
(未来屋書店碑文谷店 福原夏菜美)
大きく揺れ動く価値観と他人から遠慮なく示される評価のなかで、それでも自身を追い込みより高みに登ろうとする登場人物達の姿勢が、読んでいるこちらにもダイレクトに響いてくる。その情景を冷静に描き、時にはわがままで不器用な熱い感情の断面が本当に眩しく羨ましい。朝井リョウという作家、やはり只者ではない。
(大盛堂書店 山本亮)
SNSやYouTubeによって表現者の敷居が低くなった現在、映画館で見る価値や質より本数で勝負する再生回数基準。何が正しくて何を選ぶのか、多様化した映像コンテンツの世界で自分が製作するものは世間受けするものなのか自分が作りたかったものなのか、胸の中で膨張する迷いの中、もがき続ける二人がとても近く感じました。時代によって正しさがどんな形に変容していっても、何も変わらずに一番に大切なものがひとりひとりの胸の中にあると、この物語からしっかりと受けとりました。会話と情景が映画のようにシンクロしていくところがとても素敵でした。はじまりを予感させるラストに胸が高鳴りました。
尚吾と絋、二人が世界に名を刻むような監督に成長して欲しいと思いました。
10周年記念にふさわしい情熱と希望を感じる物語でした!面白かったです!!
(ジュンク堂書店名古屋栄店 西田有里)
人生を渡っていくための道標になる、揺るぎない北極星。「答え」と呼べるような確固たるもの。今、多様性が許されて唯一最大の正解がない世界で、私たちはきっとひどくあいまいになってしまったそれを探して生きています。だからこそ映像制作という答えのないグラウンドで立って変わってゆく価値観や信念、向き合い方に苦悩する彼らの姿に戦友のようなシンパシーを覚えたのかもしれません。自分の答えを探すというのは容易でなく、きっと沢山の絶望の先にあるものだけれど、それでも尚吾が浅沼や鐘ヶ江、千紗の言葉を契機として彼の答えに辿り着いたように、どうかこの物語でいう「問い」が、答えに迷う誰かの道を照らす優しい光であってほしいと思いました。
(ジュンク堂書店吉祥寺店 嶺まりな)
共感が止まりませんでした。
今の時代は、全てのことが影響を与え合って形づくられていることを強く感じられました。また誰もが日常で抱く感情を人間の中にあるやわらかい部分を真正面から見た様な気持ちになりました。もはや共感できない所がないそんな作品でした。
(BookCity平惣 徳島店 井出歩)
真逆の二人なのに、なぜか似ている。二人の心の葛藤や変化がありありと感じられた。
願った道に進んでも、流れに身を任せても、思う通りにはいかなくても自分の信念をどう持つかが大事なんだよなと思った。
何が正しくて、何が間違っているのかのジャッジじゃなく自分の中にただ硬いだけじゃない、しなやかな芯を持って自分の心に後ろめたさがないように生きたいと強く思った。P376の5行目「でももう自分が見えた星の形を~」という言葉にとてつもない開放感を感じた。
(東京旭屋書店 新越谷店 猪股宏美)
1つ目の成功を掴み取った青年2人それぞれの“次”が、彼らの傍でカメラが回っているような丁寧さで描かれていました。
ものづくりをする人のそれを支える側の受け手側の貪欲さ……皆それぞれの世界で己の星を模索している。そのなかでも「スター」と呼ばれる人達は、波紋が広がっていくように誰をも魅了するものを創りだしてしまう。流星のごとく時代が流れ変化し続けている中でも。
尚吾と絋はじめさまざまな登場人物の語る言葉がとても生々しく熱をもっていて、本を読み終えた後、周りに誰もいないことに戸惑いました。私自身がカメラを回して尚吾たちに密着しているような気持ちになっていたようです。朝井先生の“ものづくり”への思いや世界の変化に対する考えが真摯に込められていました。
(宮脇書店本店 藤村結香)
多数の興味を引くネット配信か、わかる人にだけ見て欲しい映像制作か……
対照的な場所に身を置くことになった かつて一緒に映画を撮った二人……
どちらの道が正解とは言えない、後輩が言うように制作現場が常に抱える葛藤。
たぶん創作にかかわる人すべてに関わってくること。作家としての朝井さんにも。
キーワードとなる“心”“顔”創作者のそれまでの人生、出会いが大きく影響してくるのか…な。この先、主人公2人がどう歩んでいくのか興味がわきます。
(平安堂 長野店 町田佳世子)
悩む青年たちと同じところを通ってきた大人たちの対比がバランスよく朝井さんらしい作品だと思いました。映画とYouTubeが題材でしたけど、本に関しても同じことが言えそうですね。黒版も楽しみです。絋のお母さんがいいキャラでした。
(文信堂書店 長岡店 實山美穂)
仕事に対して抱いている“モヤモヤ”のようなものは、自分にもしばらく(今でも?)あって自分はこんなもんじゃないとか、アイツには負けたくないとか、人と違うことをしたいとか色々考えていたことも多かった。『スター』には、そんな複雑やら、あいまいやらの感情が(絶対難しいハズのその表現が)しっかり描かれていて、これだよ!と、とても共感できました。どんなに時代が変わっても、その良し悪しを判断するのは“各々の心” 。解っていても忘れがちなそのことをしっかり刻みつつ、これも大切な“待つ”ということ。2つを忘れずに生きていきたいと思います!
(書泉グランデ 飯田和之)
そういえば最近、人はテレビをみなくなったと何かで読みました。
クリエイターの苦悩もものすごくよくわかりましたが、そうか!SNSと本物の映画の間には、大きなミゾが!! そして時代の流れで、いろいろなものが変わっていくのだ!
人も、まわりの環境も。「スター」という存在も意味も、思えば、ずいぶん変わったのだなあと思いました。本を読んで、少し離れたところから時代の流れを見つめるというのも大切だなと思いました。
(有隣堂藤沢店 佐伯敦子)
今の子どもたちのなりたい職業を聞けば、必ずユーチューバーという名が挙がる。
そこにはやりたいことをやっている人が映るのかもしれないし、お金を稼いでいる人が映っているのかもしれない。
多くの星屑たちの中で一等星、二等星のような星たちを繋いで星座を語るようにきっと見えないものを描いているのかもしれない。
みんな自分の得意な定規を持って、色々なものを大きい、小さいと選別していく。
大きさだけでは測れない、重さも色濃さもすべてを大きいか小さいかで分けることを知らず知らずに私たちは測って、「俺の方が大きい」と思って安心している。
もしくは安心したいと思っているのだろう。
今という世の中は誰にでも参加ができることが多くなったが、その分その評価に揺れ動くことも多くなった。
地面が揺れているのか自分が揺れているのかが時にわからなくなる「今」を朝井リョウという作家は見事に映し出し、そして上手に伝えてくれる。
この作品はブレることをしない。私がブレてもきっとそのブレを補正してくれるような気がする。
このブレ補正されたレンズで「今」を読んで欲しいと思う。
(ブックマルシェ津田沼店 渡邉森夫)
発信方法が増え、バズれば誰でもスターになれる時代。次から次へと新しい人や物やブームが目まぐるしく変わっていく中で、今と生きている人達は本当に“ただ待つ”という事が苦手になってしまったんだと感じました。すぐ新しい物をという気持ちばかりが先走り、一つ一つの事を雑に扱う。そして自分の価値観から外れる物は徹底的に叩く。でもそればかりをくり返した先には、人としての大事な心のこもった気持ちや自分を信じて待つという事ができなくなってしまう。各所に出てくる朝井さんが紡ぎ出す名言に何度も心が打たれました。最後に千紗が言っていた「誰かがしている悪いところよりも、自分がしている良いところを言えるようにしておく」という言葉は、まさにこれからの時代に向けて本当に大切にしていかなくてはいけない事だなと感じました。自分も誰かを叩く事よりもまさに千紗が言っていた事ができるように心がけていきたいです。
(三省堂書店有楽町店 平山佳央理)