書籍
小説
生を祝う
李 琴峰 著
ISBN:9784022518033
定価:1760円(税込)
発売日:2021年12月7日
四六判上製  184ページ 

「あなたは、この世界に生まれてきたいですか?」
子どもを産むためには、その子からの同意が必要となる世界を舞台にした衝撃作。
『彼岸花の咲く島』で芥川賞を受賞した著者による、芥川賞受賞第一作。

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書店員の方々から熱い感想を頂きました!


地球上の全ての生きるものに祝福されずに産まれくる命などあろうものか。
望まれてこの世に生を受けた命はその後の人生など知ることなどないのに。
選べないから己の、親の、全てを否定する。しかし決まった人生など何の面白みもなければ、愛や希望などというものは存在もしなくなる。
生命は人が管理するものではなく、喜びと幸せに満ちあふれたものであって欲しい。

あおい書店富士店 望月美保子さん

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未来が舞台ではありますが、絵空事と笑い飛ばせない、リアリティが胸をザワつかせます。生と死は、逃れられない最大の関心事。それなのに現代のわれわれは、自然に任せるのをよしとする。それは、思考停止なのだろうか? 問いかけは、重く深くずっしりと心に残ります。

蔦屋書店熊谷店 加藤京子さん

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この生きづらい痛みを感じる世界に生まれてくる命は、本当に生を受けたいのだろうか。生を受ける前に子供が選択するという衝撃的な内容が侵食してきた。この世の中に生命を誕生させたいというのは親のエゴなのか?
生きづらさ(=生存難易度)の数字って何なんだろう? 生まれるか生まれないかの判断って何?

ジュンク堂書店滋賀草津店 山中真理さん

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この発想は無かった。
子は授かりもの、慈しみ育てるものと思って生きてきた私は、それだけで幸せなのかもしれない。
もし我が子が「生まれてこなければよかった」と考えていたなら、その責任の所在はどこにあるのだろう。

うさぎや作新学院前店 丸山由美子さん

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「ママが勝手に産んだんじゃん」。今、中3の娘が、中1の時に放った言葉を、思い出す。じゃあ、お腹の中に居る時に「産まれたい?」「産まれたくない?」と聞かれたら、あなたは「産まれたくない」を選択しただろうか。そして、10か月を待たずして、その命に自らピリオドを打つのだろうか? 近未来に胎児の意思が尊重される日が来る。最近、話題になりショックを受けた「親ガチャ」という言葉を、リアルに目の前にたたきつけられた。その痛みに似てる。

草叢BOOKS新守山店 川口諭美さん

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命って……。人間がどうこうできるものでは……でも……できるなら……
カンタンなようで、これは、越えてはいけない一線――。
ムズかしい……。

ジュンク堂書店西宮店 水口真佐美さん

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人種やジェンダーも平等になった未来で、産まれる前の子供に同意を得なければ、出産ができないという法律を受け入れる人類。すべての差別を取り除こうとするあまり、こういった極端な思想に至ってしまうことは、完全に起こり得ないとは言い切れないと思わせるリアルさがありました。主人公が最後に下した決断も納得できないと思うのに、この世界を生きるためには受け入れざるをえなかった気持ちを考えると否定することもできず、女性としてただただ苦しくなりました。しかし命が生まれるという奇跡を今まで以上に尊いと感じることができました。

ジュンク堂書店郡山店 郡司さん

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『生を祝う』を読む機会をいただき、真っ先に浮かんだのは、もっとはやくこの世界を知りたかったという思いでした。同時に知らないままでいなくてよかったとも感じました。怖いもの見たさのように恐れていたものは、わたしも見たことがあるものだと気が付いたからです。芥川賞贈呈式のスピーチにあった「世界のひび割れ」は、おそらく、わたし含め、ほとんどの人間が人生で見つけてしまうものだと思います。不条理に溢れた社会や、光のあたらない片隅を呆然と見ていることしかないような無力感を、わたしも強く感じたことはありました。しかしそこから目を逸らして、生を肯定して過ごしていくことしかできません。生まれてしまった以上、生を呪い続けることはあまりにも苦しい。『生を祝う』から問いかけられているようだった生命倫理の可否に、わたしは答えを出せません。しかし、生きている世界の前提を疑う疑問をいだくことは、必ずしも否定的なことではなく、自分自身を主軸に立つことの一歩なのかもしれないと思いました。この世界を知れてよかったと心から思います。これから、李琴峰先生の作品、全部読みます!!!!

ジュンク堂書店名古屋店 二村有香さん

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主人公彩華と同じ女性として、結果のリジェクトはとてもじゃないが受け入れられず、ラストは苦しくて涙が止まりませんでした。この物語は現代の社会に必要な救いだと思いました。いつか、これは現実世界になる。少し不気味な気配と恐怖を感じたけれど、これはすぐそばの未来かもしれない、と思いました。

福岡金文堂志摩店 伊賀理江子

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自分でも忘れていた心の奥深くに沈めてあったものを引っぱり出され、目の前に晒される思いをしたのは初めてだ。反発もある、共感もある。あふれ出てしまった感情をまだ整理できないでいるが、私の内側に存在し続ける本になる。それは確かだ。

平安堂長野店 清水末子さん

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『生を祝う』というタイトルを見た時、「そんなの当たり前のことじゃないか」と思っていた私の、読後の価値観の揺らぎをどう伝えたらよいのでしょう。
今の社会は自分や他人の「生」を軽く見ているのかもしれない。読者のひとりひとりに問いかける力のある作品です。

金高堂野市店 小松航輝さん

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「合意出生制度」のシステムはSFとも感じさせるものだが、それに対する反対派の心境・行動の変遷、お腹の子をいとしい、産みたい母親の気持ちは現代と何ら変わらない。

文喫福岡天神 奥原さん

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まるで人の深淵をのぞいているような……。胎児による合意出生制度というこの先起こり得るかもしれない選択。夢中で読みました。生命の始まりと人格の決定とそれに伴う責任と。「自分の選択によるものだと信じるだけで、人間はその結果を受け入れやすくなる」、まさにそれだ!と頷きました。その反面、だから自分には責任がない、と他者が考えやすくなる。キャンセルも容易に出来るようになる。個の責任、罪とは……深く考えさせられました。

文真堂書店ビバモール本庄店 山本智子さん

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もし私がこの近未来の人だったら、この制度を当たり前のこととして受け入れているだろう。そして主人公と同じように苦しむだろう。でも、現代人としては、主人公の姉の気持ち、考え方に共感してしまう。望んで生まれるか、望まれて生まれるかの違いを考えたこともなかった。「命の誕生」について改めて考えさせられました。

BOOKSえみたすピアゴ植田店 清野里美さん

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胎児の側が選ぶという設定は、実際にあって選ばれなかったら悲しいことだが、本来誰でも産まれた時に言われるはずの「ウエルカム」や「サンキュー」を当たり前に言える世の中を取り戻すことを考えるきっかけになる1冊だと思う。

くまざわ書店錦糸町店 阿久津武信さん

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妊娠九ヵ月の胎児に生存難易度を提示し出産意思を確認する「合意出生制度」。同性での結婚や出産、安楽死が認められ、自分が生まれたいという意思も尊重される世界。これはディストピアなのか、本当にやってくるかもしれない未来なのかと、とても動揺しました。出産前の選別で社会的、身体的弱者が生まれなければ、自殺者は減るだろう。でも生きることって、ただそれだけで日々奇跡みたいな出会いや発見に満ちあふれている。その機会を奪ってもよいものかとも思います。私は反対! 法律とは世間の常識であって正しさではないのかもしれないと、今、見えている世界が物語を読んだ後では違って見える気がしました。

ジュンク堂書店名古屋栄店 西田有里さん

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読み始めて「あれ? 『出産強制罪』なんてあったかな?」と思うほど、近未来のシステムがすうっと入り込んできました。今から50年後、もしかしたら本当にコンファームは行われているかもしれないと思えるほどすごいシステムだと思います。ですが、どんなに辛い人生が待っていたとしても、それはあなたが望んだ結果だよと突き放されてしまう恐怖は、何とも言えず背筋がヒヤッとします。究極の自己責任だと思ってしまいました。自分の子供の出生に呪いではなく祝いをささげたい。彩華の気持ちは痛いほどわかります。出産間近でキャンセルは辛かっただろうなあと、私も子を持つ親として胸が苦しくなってしまいました。
同性同士だろうが、結婚もできて子も持てる。そんな自由な時代がいつかやってくるのか……。そんなことを考えながら読了いたしました。
未来屋書店名取店 髙橋あづささん

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「生まれるか否か」を出生前の子に問う「合意出生制度」が確立された近未来。死も生も、自分の命の在り方を自分で決定する世界という設定はとても衝撃的でした。「生きづらさ」を感じて苦しむ場面も多い現在にも、リアルに通じていて、違和感があるのに「あり得る」とも感じる不思議な気持ちでした。まだ顔も見ない我が子に「生まれたくない」といわれる親の辛さははかり知れず、快適な人生を送る為の制度のはずなのに、ぬぐい去れない不自然さに、主人公とともに頭を抱え、迷い、「人生を生きる」こと「命を生み出す」ことの重さに、あらためて、しっかと向き合わされました。数値化された生きづらさは、辛辣でグロテスクだけど、生まれてくる命には不平等無く、あたたかな祝福が与えられますように、と祈る思いです。

明文堂TSUTAYA戸田 坂本まさみさん

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予備知識なしでこの作品を読み、衝撃をうけました。
安楽死の次に認められたのが、生まれない権利とは……驚きとともに恐怖を感じました。もしかしたら、いつかそんな社会があるかもしれない。
この作品は、問題提起として大きな一石になるのかもしれない。

文信堂書店長岡店 實山美穂さん

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芥川賞が決まったときのニュースで見た、伝えたいことが溢れるのを堪えようとしながらも、少し早口な李琴峰さんを思い出させる文章でした。そして贈呈式のスピーチを思い起こさせる本作。吉野弘の「I was born」の頃から、自分の現在を「親ガチャ」という言葉で慰める最近まで、「生まれさせられた」という感覚を持つ人は一定数存在する。現在の決して生き易いとは言えない世の中に子供を「産んでしまった」親として、とても重く、興味深い作品でした! スピーチの最後に作品を捧げられた読者のひとりとして、これからも、ずっと応援していきたいです。いえ、応援させてください! これからの作品も、楽しみにしています。

くまざわ書店南松本店 若林美佳さん

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考えた。色々考えさせられた。死ぬことを選べるのであれば、生きることを選べるのも、個としてはあたりまえにあればいいのかもしれない。
しかし、先に何があるかわからない不安度の中で世の中が不安定になればなるほど人は生まれることを選択しないのでは? ひとがいなくなっていく生死はやはり自然や神の領域で、人間なんかが決めてはいけないのでは? 自己決定で選んだ命で生きていくことは、どこにも逃げ場がなくどこにもたわみがない、少しぐらい誰かのせいと思えることができなければ生きることはとても苦しいのではないのか。そして、いろいろ考えた末に無事に生まれてきたことに、「ありがとう」より「おめでとう」を贈れる世の中になればいいと思いました。

未来屋書店高の原店 元尾和世さん

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凄く面白かった!! 胎児に生まれない権利を認める世界、そんな権利があったなら、この世に生まれてこない事を選んでしまうかもしれない身近な人を思い浮かべながら読みました。自然な出生を嫌悪してきた彩華が苦悩する気持ちは容易に想像できた。決断することに意義があるのだろう。その決断に後悔が無いことを願う。生まれてくる子供にリジェクトなどされない親、世界になれば……と切なく儚い願いが残った。

三洋堂新開橋店 山口智子さん

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もし、私がこの物語の世界で生まれるとしたら、コンファームでどう答えるだろう。膨大なデータをもとに算出された生存難易度のみを頼りに決められるだろうか――。
〈アグリー〉を選んで生まれてきても、彩華の様に自分が選んだから、どんな挫折も耐えてやろうと強くなれるだろうか――。
いささか自信がない。ただ、私の生が親から心から言祝がれ、それに応えられたものだったらいいなと思う。

山下書店世田谷店 漆原香織さん

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人生って、人間って、なんて複雑でしっちゃかめっちゃかなんだろう。
善悪なんて本当はないんじゃないかと思った。
こっちから見れば善でもそっちから見れば悪なんてことはたくさんあって、悪だと思っていたことがある日突然自分の中で善に変わる時の衝撃と苦しさと居た堪れなさを痛いほど感じた。
そしてそんな出来事から私たちは他人を理解して寛容になるのだろう。
私がこの物語の時代を生きる一人だったら……
そう考えてもやっぱり何が正しいのかわからない。
けれど、生きているならほんの些細な事でもいいから幸せを感じたい。
その思いはいつの時代を生きようと変わらない願いだと思った。

東京旭屋書店新越谷店 猪股さん

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『生を祝う』とても印象深い物語でした。
生まれるということ、生きるということ。
今まで生死をテーマにしたものは多く読んできましたが、ここまで考えさせられたものは初めてです。
一度でも死を考えたことがある人は読んで欲しい。
死生観を揺さぶられました。

未来屋書店碑文谷店 福原夏菜美さん

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李琴峰先生、面白い!
産まれてきた意味を探るのではなく、意思を確認する。
こんな世界があったのなら、誰も「なんで私が生まれてきたのよ」と叫ぶこともなくなる。そして、自分で選んだ人生をもっとアグレッシブに使えるのでは。この発想、親から見た思い、なるほどと、ふむふむうなずきながら読みました。本当に面白い!!

有隣堂藤沢店 佐伯敦子さん

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主人公・彩華は愛するパートナーとの子どもを妊娠し、幸せをかみしめていた。そんな中、少し苦手意識のある姉から電話がかかってきて……。
今よりも進化した(筈の)社会なのに、とてつもなく窮屈に感じた。尊重すべき意思、自由。正論だからこそ、その正論が我々を縛り付けて本来の自由をうしなっているかのようにも感じられるのが皮肉だ。違いを認めるからこその自由がいつの間にか同調圧力へ変遷し、縛り付ける。本末転倒この上ない。綺麗ごとだと自覚しているが、「命」への冒瀆にも見えてしまう忌避感が周囲の酸素を薄めているかのよう……。
さまざまな示唆を含ませる、近未来ディストピア小説

明林堂書店 南宮崎店 河野 邦広さん

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子どもは親を選べないということを「親ガチャ」というらしい。とすればこの小説は「産ガチャ」とでも呼ぶのか。
胎児が予定日の2週間前に自分で「産まれるかどうか決める」世界。
「アグリー」か「リジェクト」か、親は子どもの意思を受け入れなければならない。つまり子どもが「リジェクト」を選べばそれは「キャンセル」つまり堕胎するしかない。子どもの同意無くして勝手に出産することは違法であり将来子どもから訴えられることもある……って……これは、9か月以上の時間を共に生きてきた母親に突きつけられる恐怖の「拒否」である。耐えられるのか。自分なら……たとえそれが「法律」で定められたことだとしても自分の身体の中で成長し日々大きくなるさまを感じてきた「分身」による全否定に耐えられる気がしない。
同性間でも自分たちの遺伝子を持つ子どもを産むことのできる世界。女同士だから分かり合えているという錯誤。
ここから二人はどう生きるのか。
産まれる者の意思とは……。
誰でも時間と共に考えが変わることはある。生まれる前に自分の生を拒否した者が何十年後かに「生まれてきてよかった」と思うかもしれない。その逆もあるだろう。そういう機会を奪うこの世界。
じわじわとじっとりと根源的な恐怖がしみだす。「生を祝う」のか「生を呪う」のか。

精文館書店中島新町店 久田さん

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これはなかなかの衝撃作だ。
近未来とはいえ、出生前に「生きたい」という意思を計測し、その意思が最重要となり、それを無視すれば犯罪者となるというのはなかなか想像の範疇を超えてくる。
とはいえ、産まれた以上は最善に生を全うするという証であるともいえる。
そうした意味を含め、生きることを、生ききることを賞賛しているのだろう。
生を与えらえれた者として、生を全うする者として、もう一度「生きる・生まれる」ことを美談だけでなく、まるごと受け止めたい。

ブックマルシェ 渡邉 森夫さん

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価値観は時代で変わってきた。その時の正解が時代が変わることで最低最悪の不正解となってしまう。
選べる世界になったのに、幸せになれるとは限らない。
的外れな感想かもしれないのですが、見事にどれも正論なのだけれど、正論が全て正しい訳ではない。
今の、自己責任を叫ぶ風潮を感じ、選べるということは、選んだということは、そこから先は自分次第と言われてる気もしました。
人権を盾にとって、産まれてしまって苦しかったら安楽死も認められる。
子供を宿した母は無事に産まれてくることを心底願っているのに。
子供から拒否をされてしまい、それを受け入れざるを得ない、子にとっても親にとってもこれは、幸せなのか残酷なのか。

ラストの彩華の選んだ決断は彼女にとってとても大きく、自分が後悔して苦しんでも子供の思いを、初めての意思を尊重したように感じました。私には子供がいないので分かりません、でも想像するだけで震えました。身がちぎれそうに苦しく涙か止まりませんでした。

ただ、佳織の存在と、確かに子供への愛があったから決断した事だけはひしひしと感じました。

読み出したらその驚きの設定もさることながら、登場人物達の会話に夢中で読んでいました。
正直申します。こんなに面白いと思っていませんでした! 失礼をすいません! めちゃくちゃ心がざわざわして、揺さぶられました。面白いです。
もっと、作者さんの思いを感じたいと思いました、この設定の世界でのお話もっと読んでみたいです。
他の作品も読みたいです。

郁文堂書店庭瀬店 藤原郁子さん

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人の生き死にに関して、どんなに言葉を尽くしても足りないように、この作品への感想を書くのはとても難しいことです。今抱いている感情も、もし〈コンファーム〉を受ける場にたったときを想像するとどう変わるのかまったく分かりません。誰かの自由は誰かの不自由によって、誰かが選ばれるということは選ばれなかった誰かによって成立しているということ、そして絶対なんてものはないことを思い知らされました。
個人というものを尊重しているかに見えて、大多数にのまれていく流れ、〈みんな〉とか〈普通〉とか〈自分の意思〉とかいうものの不確かさの中で、自分を形成する確かなものとは何なのか考えました。有難うございました。

蔦屋書店嘉島 迫彩子さん