戦後、幼くして天涯孤独のホームレスになった著者が、デビュー作としてその数奇な生き様を綴ったノンフィクション。運命に抗(あらが)いつつ数々の事業を成功させ、小卒ながら博士号を取得。ボランティア活動を通して世界の要人たちとも交流を持つ。その生い立ちから青年期までを描いた上巻では、奉公先で酷い虐待を受けた体験から、いじめの問題についても深く考察した。
東京の下町に生まれた主人公(著者)あいヒロシは、4歳のおわり頃に両親が離婚。クズ鉄やパチンコ玉拾いを“仕事”とし、小学校へは給食を食べるためだけに通ってなんとか生き延びるも、頼りの母が突然行方不明となる前から小学生ホームレスに。まもなく親戚の家へと奉公に入るが、そこでは想像を絶する虐待生活が待ち受けていた。自らの体験から、「いじめ」の問題についても深く考察し、著者なりの改善策を本書で提言する。
18歳の春に「強制収容所」にも似た奉公先を飛び出すと、靴職人の親方のもとへ弟子入り。見習いとして日に18時間近く働く生活となるが、ここでの暮らしは精神的に天国。働くことを喜びに変えながら21歳で独立後、靴の仕事は順調で、浅草に初めて建てた一軒家の半分を間貸してアパート経営も始めることに。しかし、順風満帆にみえた人生には思わぬとし穴が待ち構えていた。その後、幼い自分を捨てた父と、突然行方不明になった母の秘密も明らかになる。とても実話とは思えない人生の中で、ヒロシの生き様は困難を生き抜く現代の我々に勇気と希望を与える数奇なサクセスストーリーだ。