雑誌
小説トリッパー
小説トリッパー 2023年春季号
定価:1320円(税込)
発売日:2023年3月17日
A5判  アジロ綴じ  2023年春季号 
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「小説トリッパー」23年春季号「季刊ブックレビュー マイノリティ×マイノリティの到達点 『黄色い家』川上未映子(中央公論新社)」につきまして

「小説トリッパー」2023年春季号に掲載された鴻巣友季子さんの「季刊ブックレビュー」で取り上げた、川上未映子著『黄色い家』の登場人物の職業について、編集部より付記があります。
該当箇所は199ページ2段目、終わりから8行目「彼女たちのしたことは善いか悪いかといえば、悪い。年をごまかして風俗業に就き、スナックで働き、正真正銘の犯罪にも手を染めた」のなかの「風俗業」という言葉です。ここでの「風俗業」は登場人物の一人が働いていた「キャバクラ」を指し、「年をごまかして」は当時未成年にあたる女性たちが水商売につくために年齢を偽ったことを指します。

「風俗業」とは「客に遊興・飲食などをさせる営業の総称。待合・料理店・ダンスホール・バー・パチンコ屋など」を指し、そこには「キャバクラ」も含まれることから言葉の使用として誤りではなく、鴻巣さんや校閲者に責任はございません。しかしながら風俗業に含まれるはずの「スナック」と切り離して言及されていることから、これから作品に触れる読者にたいして「性風俗業」を想起させる可能性があります。この点については、編集部が考慮すべきでした。

『黄色い家』は、主人公たちが自分の置かれた環境の中でサバイブしながら、どのような職業を選択したか、選択せざるを得なかったかということが、重要な要素となっている小説であることから、この文章を公表いたしました。
すでに書評をお読みになってくださった方々も、これから書評をお読みになる方々も、この点をふまえてご高覧いただけますと有り難く存じます。編集部としましては、今後文章表現に対して、より慎重に向き合っていく所存です。

2023年3月22日
朝日新聞出版「小説トリッパー」編集長
山田京子


[新連載小説]

垣谷美雨

墓じまいラプソディ

[創作]

玄侑宗久

繭の家

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遺影

[連作]

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[連載完結]

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[第9回 林芙美子文学賞発表]

受賞作

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選評

井上荒野

書ききった迫力


角田光代

怠惰という強さ


川上未映子

切実さとおそれ


[インタビュー]

彩瀬まる

自然物のように移ろう時代のなかで
インタビュー倉本さおり


[エッセイ]

<私のBOOM>

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朴沙羅 応用できすぎる趣味


<TRIP体験>

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三木那由他 ドリアンアイスの夜

[連載評論]

  • 佐々木 敦/成熟の喪失 庵野秀明とその時代
  • 高橋源一郎/たのしい知識

[連載エッセイ]

  • 松井玲奈/私のもしも図鑑
  • 穂村 弘/この漫画のここが好き

[連載小説]

  • 貫井徳郎/ひとつの祖国
  • 田中慎弥/死神
  • 神林長平/上書きされた世界――The Overwritten World

[季刊ブックレビュー]

  • 鴻巣友季子
    マイノリティ×マイノリティの到達点 
    川上未映子『黄色い家』
  • 杉江松恋
    人間の生命をこのように描けるとは
    朝比奈秋『植物少女』
  • 大塚真祐子
    「共に知る」ために紡がれた四十年
    津村記久子『水車小屋のネネ』

[クロスレビュー]

  • 江南亜美子/「自分」を知るための創造的営み
    井戸川射子『この世の喜びよ』
    ぺ・スア『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』
  • 倉本さおり/やり過ごしたいつかの〈わたし〉に
    新胡桃『何食わぬきみたちへ』
    石田夏穂『ケチる貴方』

[文芸季評]

  • 中村真理子/いくつかの罪と、うっすらとした嫌な気持ち

[エンターテインメント季評]

  • 高津祐典/不合理ゆえにわれ信ず

[報道の現場から小説を読む]

  • 市田 隆/誰もが「災厄」からの日常を生きる
    佐藤厚志『荒地の家族』

[本と書店をめぐる物語]

  • 高頭佐和子/「バブルの時代」の熱気と焦燥感
    桐野夏生『真珠とダイヤモンド』上・下

[永江堂書店]

  • 永江 朗/校正・校閲を考える10冊

第10回林芙美子文学賞応募要項〈予告〉


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