御遺誡(ごゆいかい)と呼ばれる史料がある。
遺詔や遺言とは異なり、多くは子孫や門下などの後人に遺した訓戒である。そのほとんどはいつしか失われてしまい、あらたな嫡流となった人物の「御遺誡」だけが後世まで残された。
近年、平安時代の皇位や摂関の継承、さらには時代の深層に迫り得る史料として注目されている。千年以上も前の天皇や大臣が己の命より大事にしたものとは何か。子孫や門下に何を遺そうとしたのか。皇統の確立と摂関家の成立にはどんな関係があるのか。
大河ドラマ「光る君へ」の時代考証を務める日本古代政治史の大家が、嵯峨天皇、宇多天皇、菅原道真、醍醐天皇、藤原師輔の五つの御遺誡を通して案内する奥深い古典世界。