新書
社会
日本人が知らない世界遺産
林 菜央 著
ISBN:9784022952752
定価:990円(税込)
発売日:2024年8月9日
新書判並製  260ページ  新書0965 

日本人が愛してやまない世界遺産。書店には世界遺産を扱った書籍や雑誌がたくさん並んでいる。しかし、よく知られていないことも意外に多い。そもそも、どのようなプロセスで世界遺産は選ばれるのか。どんな時に取り消されるのか。どんなカテゴリーがあるのか。選ばれることのデメリットはないのか。50年の歴史を持つ今、どんな問題点が発生しているのか。管轄するユネスコとはどのような組織なのか。
ユネスコに20年以上勤務し、日本人としては唯一の世界遺産条約専門官である著者が体験してきた、アジア、アラブ諸国、ヨーロッパ、アフリカでの多くの現地査察や開発途上国の人々との協働。「すべては体力あってこそ」と思わず述懐するそれらの体験を通して、世界遺産が直面する問題と、ユネスコの知られざる真実を語る。世界遺産の世界に身を置いている著者による、国際文化政治の内幕。

●著者略歴
林菜央(はやし・なお) 日本人唯一のユネスコ世界遺産条約専門官。上智大学、東京大学大学院で古代地中海・ローマ史専攻。フランス政府給費留学生としてパリ高等師範学校客員研究員、パリ第四大学ソルボンヌ校で修士号取得、ロンドン大学で持続的開発も学ぶ。在フランス日本大使館で文化・プレス担当アタッシェを経て、2002年よりユネスコ勤務。ユネスコ・博物館プログラム主任などを経て現職。直接担当してきた世界遺産・博物館のある国はアフガニスタン、カンボジア、ベトナム、ラオス、スリランカ、バングラデシュ、パキスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、イラン、エジプト、シリア、イラク、チュニジア、モロッコ、イスラエル、パレスティナ、サブサハラ諸国、ジョージア、ウクライナなど。

●目次より
まえがき
「未来への贈り物」としての世界遺産
世界と個人をつなぐ物語としての世界遺産
なぜ日本人を惹きつけるのか?  

1章 世界遺産の本当の魅力は「多様性」
デスクワークだけでは終わらない仕事
ミッション遂行のため、巨大な洞窟をひたすら歩く
死がすぐ近くにある3日間
「水没の危機にあるアブ・シンベル神殿を何とかして救いたい」
採択からわずか3年で発効した「世界遺産条約」
映画キングコングの撮影場所となったベトナムの世界遺産
富岡製糸場、石見銀山は「産業遺産」
鉄道好きにはたまらない「インドの山岳鉄道」
自然遺産の一分野「海洋遺産」
保存と開発の問題を抱える「歴史的町並み」
「文化的景観」に選ばれた農地 
世界遺産リストから抹消されたドレスデン・エルベ渓谷
危機にさらされている世界遺産(危機遺産)
バーミヤンの大仏の復元は「正しい」ことなのか 
「負の遺産」ではなく「記憶の場」  
国境紛争のきっかけになった世界遺産「プレアヴィヒア寺院」
「その建物を除去したい」というリクエストに応えるべきか否か
日本がリーダーシップを発揮した「無形文化遺産保護条約」
世界遺産とは異なるシステム「世界の記憶」

2章 世界遺産はどのように選ばれ登録されるのか
どのような流れで世界遺産は決まるのか
新規登録手続き―ギリギリで間に合わないという悲劇 
日本の暫定リストに何がエントリーされているか
越境連続遺産とは何か?
候補の9割が認定される
スリランカの寺院はなぜ登録名称を変更したのか
登録プロセスのハイライト「査察ミッション」と4種類の勧告
登録理由が大きく変わった「キリシタン関連遺産」
世界遺産における「真正性」「完全性」とは?
首里城火災と再建の際に議論された「真正性」
管理当局が存在しなかったが登録された例外的存在―アンコール遺跡

3章 世界遺産のメリットとデメリット
ラオスのダム開発と世界遺産の複雑な関係
世界遺産と経済効果
観光産業においても重要な存在
「アドリア湾の真珠」―有名観光地であることのプラスとマイナス 世界遺産の観光統制策が評価されたアムステルダム
観光と遺産マネジメントのバランスをとるために
世界遺産センター主導のプロジェクト「世界遺産への旅」
気候変動は世界遺産にも大きな脅威
気候変動の抑制に貢献するロッキー山脈
誰のための世界遺産か
世界遺産に指定されたことで、その地域の慣習に変化が生じることもマレーシア・ジョージタウンの成功事例
仕事で大事なのは「共感力」
日本人のみなさんに、世界遺産のためにしていただきたいこと
我々はどこにいても、グローバルに生き、消費し、働いている

付録 私のお薦め世界遺産 

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