全身刺青の日本人義勇兵、愛犬連れで戦場を案内する“ぼったくり”(!?)フィクサー、将校の母に憧れ志願兵となった寿司好き大学生、ドローン部隊で活躍する非体育会オタク系青年たち、ウクライナの汚職と闘うジャーナリスト、爆撃で腕を失いウクライナに避難するクルスクの少年……。ロシア侵攻後のウクライナに七度訪れ、最大の激戦地で従軍取材したカメラマンが見た、「非日常」で生きる人々の日常。戦場は涙と怒りだけで語らなければいけないのか? そこには、“私”が知っている笑顔も、知らなかったほほえみもあった。小泉悠氏とのマニアック対談も収載!
教官がお手並み拝見と私に手裏剣を差し出した。手裏剣を投げたことはなかったが挑戦を断ることはできない。ターゲットも見ずに私は木の方向に力いっぱいオーバーハンドで手裏剣を投げるとバシッ!と深々と突き刺さった。「ニンジャだ!」とざわめきが起きる。“日本人としての面子は守ったが、俺はウクライナで何をしているんだ?” ――本文より
【目次】
第1章 今度こそ、最後の戦場 2022年4月
第2章 愛犬第一主義のフィクサー 2022年5月
第3章 脳内を麻婆豆腐に支配されたインテリ義勇兵 2022年9月
第4章 組長の子に生まれた義勇兵の苦悩と贖罪 2023年1月
第5章 フィンランドの“悪党” 2023年7月
第6章 軍の汚職を暴くジャーナリスト 2024年3月
第7章 瓦礫に咲く向日葵を背にダンサーは舞う 2024年3-4月
第8章 知的集団化するドローン部隊 2024年3-4月
第9章 日本で生きると決めたハルキウの母親 2024年11月
第10章 将校の母に憧れた娘、18歳で最前線へ 2024年11月
第11章 死のジレンマに置かれる兵士たち 2024年11月
第12章 ウクライナの内戦だと、ロシア人老女は言った 2025年3月
小泉悠+横田徹特別対談 戦場にも日常がある。日常の先に戦争がある。
横田 徹(よこた・とおる)
1971年、茨城県生まれ。97年のカンボジア内戦をきっかけにフリーランスの報道カメラマンとして活動を始める。その後、インドネシア動乱、東ティモール独立紛争、コソボ紛争など世界各地の紛争地を取材。9・11同時多発テロの直前、アフガニスタンでタリバンに従軍取材。2007年から14年までタリバンと戦うためにアフガニスタンに展開するアメリカ軍を従軍取材。13年、ISISの拠点ラッカを取材。17年、イラクがISISを撃退したモスル攻防戦を取材。22年5月、ロシアによる侵攻を受けたウクライナで従軍取材。本書発売時までに、ウクライナ戦争の取材は7回を数える。著書に『戦場中毒――撮りに行かずにいられない』(文藝春秋)、『ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか――取材現場からの自己検証』(危険地報道を考えるジャーナリストの会・編、集英社新書)などがある。雑誌「Fielder」「AERA」への寄稿や、「真相報道バンキシャ!」への出演、取材映像提供など多方面で活躍。