「24時間戦えますか」から
「おじさんの詰め合わせ」まで
栄養ドリンク、缶コーヒー、スーツ、下着、メンズ美容、ホスト看板、選挙ポスター……
CM・ポスターに刷り込まれた“理想の男性”の虚像を暴く!
缶コーヒー広告のスーツ姿と背景の高層ビル群、
「出世」や「モテ」と結びつけられるヒゲ脱毛、
決まって命令口調で真正面から睨みつける本田圭佑。
その〈男らしさ〉のイメージはどこからきて、
男性のみならず見る者の価値観に影響を与えてきたのか。
スーツ/大股/集団/腹筋/白人男性/お笑い芸人/生涯現役……
街中の広告に潜む、これまで「なかったこと」にされてきた男性表象の問題点を炙り出す。
【目次】
序章 「男らしさ」の広告観察
第1章 ドリンク広告と働く男 ――栄養ドリンク、コーヒー、ビールの広告史
・リポビタンDの車内広告は何が問題だったのか
・「24時間戦えますか」バブル時代の栄養ドリンク広告
・「違いがわかる男」のためのコーヒー
・ビールかけという究極のホモソ儀式
・「男は黙ってサッポロビール」が描き出した「男らしさ」
・コロナ禍で起きた「男らしさ」表現の変化 ……ほか
第2章 スーツとパンツ ――装いが作る身体の価値
・「背景高層ビルおじさん」はどこへ向かうのか
・スーツ文化の墓場としての《Cut Suits》
・褌(ふんどし)を締めることの精神性
・カルバン・クラインと腹筋の商品価値
・細マッチョのK-POPスターが示す新しい「男らしさ」
・アバクロの栄枯盛衰 ……ほか
第3章 自己鍛錬としてのメンズ美容 ――「崇拝」と「推し活」の視線
・能力主義と結びつく男性の「ケア」
・「大谷翔平崇拝」を分析する
・推し活を取り込むマーケティング
・男性脱毛広告4つのパターン
・本田圭佑に命令されたい男たち
・これからの男性のケアの可能性 ……ほか
第4章 「デキる男」を目指すのは何のため? ――能力主義と「報酬」としての女性
・「男磨き界隈」を考える
・英語圏を支配する男性中心カルチャー「マノスフィア」
・「オタ恋」プロモーションへの違和感
・クリニック広告とホストクラブ看板の共通点
・再生産される「バーキン買うなら豊胸しろ」系広告
・性感染症予防ポスターに潜むミソジニー ……ほか
第5章 選挙ポスターに見るジェンダー表現 ――「おじさんの詰め合わせ」から脱却するために
・「おじさんの詰め合わせ」発言が引き起こしたハレーション
・遍在する「男の詰め合わせ」と家父長制政治
・日本維新の会が流行らせた「断言口調」と「太ゴシック斜体文字」
・SNS時代の選挙ポスター
・政治家に求められる「男らしさ/女らしさ」
・「(国名)election poster」で画像検索してみたら ……ほか
第6章 その〈男らしさ〉はどこへいくの? ――これからの教育と医療と男性性
1 田中めぐみさんに訊く、男子校でのジェンダー平等教育の実践と課題
・広告・メディアが中高生に刷り込む能力主義
・もっと男性同士の「おしゃべり」が必要だ
2 堀川修平さんに訊く、性教育史研究から捉える「男らしさ」
・大学で「男性」としてジェンダー講義をするということ
・「弱者男性」を自認する学生との向きあい方
3 池袋真さんに訊く、多様なジェンダーを生きる人に伴走する医療とケア
・接近するジェンダー医療と美容医療
・医療業界の「男らしさ/女らしさ」規範 ……ほか
【著者】
小林美香(こばやし・みか)
国内外の各種学校/機関、企業で写真やジェンダー表象に関するレクチャー、ワークショップ、研修講座、展覧会を企画するほか、執筆や翻訳を行う。2007年から2008年にAsian Cultural Councilの招聘およびPatterson Fellowとしてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)、サンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会や研究活動に従事。2010年から2019年まで東京国立近代美術館客員研究員を務める。東京造形大学、九州大学非常勤講師。