書籍
評論
吉田修一と『国宝』の世界
酒井 信 著
ISBN:9784022521231
定価:1980円(税込)
発売日:2026年1月7日
四六判並製  232ページ 

2025年、小説&映画ともに大きな話題となった吉田修一の『国宝』。

デビュー『最後の息子』から吉田作品を追ってきた同郷の評論家が、
『国宝』を中心に、『パレード』『パークライフ』『悪人』といった代表作から最新作『ミスサンシャイン』まで、その魅力を論じる徹底ガイド。

【目次】
はじめに 吉田修一の小説
 
第一章 『国宝』の特徴と歌舞伎の歴史
1 『国宝』が描く歌舞伎の魅力
2 歌舞伎の歴史と『国宝』
3 『国宝』の喜久雄と『悪人』の祐一の類似
4 立花喜久雄のモデルは?
5 谷崎潤一郎の『刺青』と吉田修一の『国宝』

第二章 『国宝』が描く人間国宝と人間天皇
1 人間国宝と人間天皇 
2 『国宝』と『ねじまき鳥クロニクル』
3 歌舞伎役者の苦難、大衆芸能のルーツに戻る旅
4 女形と歌舞伎座の歴史
5 歌舞伎座を設立した福地源一郎と座紋「鳳凰丸」
6 料亭「花丸」と長崎の史跡料亭「花月」
7 原子爆弾による被害と「鷺娘」の悲しみ

第三章 デビュー作「最後の息子」と初期作品群
1 段ボールの机の上で書いたデビュー作
2 初期作品の主人公――「夜の世之介」と「若い悪人」
3 「最後の息子」にみる後期作品への広がり

第四章 純文学とエンターテインメントを超える
1 『悪人』の原型――山本周五郎賞受賞作『パレード』
2 ウェブ上のコミュニケーションを先取る
3 『パレード』の若者たちの「成熟と喪失」
4 アメリカ同時多発テロ事件への応答――芥川賞受賞作「パーク・ライフ」
5 都会のエアポケットとしての「日比谷公園」 
6 平凡で「かけがえのない場所」が破壊されることへの静かな抗議

第五章 『悪人』が描いた平成の原風景
1 祐一と依子の「奇妙な」母子関係
2 母親から受け継いだ「不器用さ」
3 就職氷河期を象徴する現代文学
4 非正規雇用の二人にスポットライトを当てる

第六章 逃亡劇から恋愛劇へ
1 祐一と光代にとっての長崎と佐賀
2 祐一の乗る白いスカイラインとは?
3 不器用な恋愛劇を美しい物語に昇華

第七章 『悪人』以降の展開
1 男女別の秩序に生じる「悪」の重層性
2 『さよなら渓谷』と島崎藤村『破戒』における「告白」
3 「悪」の布石としての偏執的な「愛」
4 「救いのないしがらみ」と「感情の訛り」
5 『太陽は動かない』が描くアジアの風景

第八章 二つの社会派ミステリ
1 『犯罪小説集』における日常の中の「タナトス=死の欲動」
2 裕福な専業主婦が抱える「テロリスト」のような攻撃性
3 日常と紙一重のところに潜む「危うさ」
4 映画「楽園」が炙り出す『犯罪小説集』のカタルシス
5 不器用な「悪人」たちの「逃亡劇」――『逃亡小説集』

第九章 戦後史の闇へ 
1 『アンジュと頭獅王』の「理不尽な暴力」と民間信仰
2 近代史の闇に切り込む社会派ミステリ『湖の女たち』
3 『湖の女たち』と川端康成の『みずうみ』
4 松本清張『砂の器』への挑戦状――『ミス・サンシャイン』と『罪名、一万年愛す』

第十章 映画「国宝」の風土と到達点
1 映画「国宝」の風土
2 吉田作品を彩る役者たち
3 社会現象としての到達点

あとがき

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