復員した画家は本物なのか?
いや、本物と偽物になんの違いがあるというのか。
芥川賞連続ノミネート、いま文芸界が最も注目する才能が放つ問題作!
「人は、まったく同じものがふたつ以上あると、ひとつを本物、残りを偽物と決めないと落ち着かない生き物なのかもしれませんね」
敗戦後、戦地から復員した画家・平泉貫一は、出征前と同じ人物なのか。
似ても似つかぬ姿で帰ってきたものの、時をおかずして男は失踪してしまう。
兵役中に嫁いだ妻、調査の依頼主、妾、画廊主、軍部の関係者たち――何人もの証言からあぶり出される真偽のねじれ。
調査を依頼された私が辿りついたのは、貫一が贋作制作を得意としていたという事実だった。