古代アンデスでは、人びとは農耕を開始する前から複雑な構造の神殿をつくり、それを繰り返し造替(神殿更新)することで社会を統合していった。そのなかから長距離交易を行う権力者が登場し、より大きな社会を形成することを、60年に及ぶ日本調査団の発掘調査が明らかにした。いっぽう、世界最古の文明とされる西アジア・メソポタミアでは従来、農耕・牧畜の開始、人口の増大、都市の発達、社会的余剰の蓄積、神殿の形成との順で文明の発展が見られたと言われてきたが、先土器新石器時代の遺跡のありかたから、アンデス文明同様に祭祀に関わる建物が農耕開始に先駆けて発達することがわかってきた。近年、この従来の史観をくつがえす大発見となった紀元前9千年紀の巨大祭祀遺跡、南東アナトリアのギョベックリ・テペ、アンデスで世紀の発見となった前800年代のワカ・パルティーダ遺跡の詳細も含め、神殿を中心にどのような社会が形成されたのか、権力はそのなかでどのように形成されていったのかをわかりやすく解き明かす。