尊敬されつつ「老いる」のが困難な現代。年を重ねるごとにますます輝く人がいる一方、老いるほどに嫌われる人もいる。その境目は何か。〈老後は観念に過ぎず、好奇心さえ失わなければ人生に老後なし。終活などやめて、いかに自分を向上させるかを考えた方がいい。覚悟ひとつで老年は「老成の期間」となり、老いてからの進歩こそ、人間の生き甲斐だ〉。「他人の申し出を断らない」「自分自身に簡単に納得しない」など、ちょっとした心構えから変えられる明日の自分。「人は成熟していく生き物である」が持論の宗教学者による、超高齢社会に捧げる「老成のすすめ」。
(目次より)
第1章 老いない道
老齢がものを言うこと/「老成」の意味/儒教の徳目/仏教の四苦/輪廻の観念/老いることでこそ etc
第2章 老後は、ない
「老後問題」は新しい/三分割される人生/老齢の子育て/長生きする不幸/老いたからこその進歩 etc
第3章 死ぬまで生きる
いつからが老後か/武者小路実篤の試み/平均寿命の影響/「太く短く生きる」難しさ/「見る」ことを重ねる意味 etc
第4章 「御先祖」になる
柳田國男の『先祖の話』/先祖とは何か/家督の祭祀権/日本人の「先祖崇拝」/サラリーマン家庭の難しさ etc
第5章 本当の人生は隠居から
法律用語としての隠居/インドの「四住期」/芭蕉も若沖も西鶴も/現代における隠居/好奇心という扉 etc
第6章 終活よりも出家
無縁墓の時代/終活の実情/出家のはじまり/出家の理由/仏の世界に生きる/理解できないものとの出逢い etc
第7章 子どものこころを失わない
老成の条件/新陳代謝をくり返す世界/それぞれの通過儀礼/「時分の花」と「まことの花」/煩悩を掻き立てる世界 etc
第8章 老いというチャンス
忍び込む老い/自己防衛の機能/『戒老録』の教え/戒の本源性/信仰の有無/試練というチャンス etc
第9章 人生には締め切りがある
目的があるかどうか/執着という敵/墓という枷/「死にとうない」の真意/見えにくい多死社会/死の現状 etc