〇「あなた自身の死生観」のために最適の書。
「魂のふるさと」「無常」「孤独」「悲嘆」「慰霊・追悼・鎮魂」「桜」「うき世」を鍵言葉として
大伴旅人、山上憶良、菅原道真、紀貫之、西行、芭蕉、一茶、折口信夫、金子みすゞ、漱石、金子兜太……の作品を読みこむ。
〇宗教学、死生学の第一人者で、グリーフケア研究を担ってきた著者にとっても、加齢とともに死、喪失、別れは、切実さがます。
本書は宗教の教える死生観、詩歌や物語を手がかりに、現代から古代へ、古代から現代へと往還しながら、今を生きる私たちが自分なりに腑に落ちる死生観を問い直すための見取り図だ。
歌人にして宗教民俗学者の折口信夫は「魂のふるさと」に注目して、古代人の死生観をさぐり小説『死者の書』へ、同時期に詩人の金子みすゞは喪失と祈り、死の彼方を童謡歌詞でうたった。「無常」を知る系譜は、子どもの死に親の哀切な心のあふれる一茶の『おらが春』、桜を通してはかない命を歌った西行、死の瀬戸際を経験して安らぎを見いだした漱石の漢詩へとたどる。「あなた自身の死生観」の手助けになる最良の一作。
〇目次から
序章 自分自身の死生観を探る――東日本大震災後に目立つ死生観探究
第1章 魂のふるさとと原初の孤独 死者が近くにいるという感覚/折口信夫のマレビト/魂のふるさとへの憧憬
第2章 無常を嘆き、受け入れる 無常――野口雨情の童謡と一茶の「おらが春」
/無常を描き出す宗教文書と文芸/無常観――芭蕉と李白
第3章 悲嘆の文学の系譜 王朝文芸の「はかなし」と死生観/母の悲嘆と作者の憤り、そして笑い
第4章 無常から浮き世へ 桜に託された孤独、苦悩と信仰の間/現代人のうき世観と魂のふるさと
終章 夏目漱石、死生観を問う――死生観が問われる時代……「目次」から