どれほどしゃかりにきになっても、若い時分にすっかり戻ることはできない。
でも、世の中にこれほど楽しいことがあるとは想像してもみなかった。
水からくりの女太夫、おはつ三十七歳
伊勢型紙の職人、おもん四十一歳
時代小説の名手による
人生の七ツ下がり(午後四時過ぎ)で出会った二人の
ほろ苦い友情と恋の物語。
10代のころ、水からくりの女太夫として見世物小屋を沸かせてきたおはつは、引退後、舞台裏の雑用などをこなしながら子育てと介護をしてきたが、ふたたび舞台に立ちたいと思い始めている。
仕事一筋、過去には大評判を取り、型紙職人として技巧を極めてきたおもんは、齢を重ねるにつれ体力も腕前も落ちてきていることを実感し、さきゆきに不安を抱いている。
あることをきっかけに友人づきあいをはじめた二人は、女手ひとつで子育てをしてきたこと、技量を極めたいと思っていることなど、互いに似たところがあることを知って、急速に交友を深めてゆく。
が、実際には正反対の二人は、相手には伏せていることもあって……