書籍
小説
生皮
あるセクシャルハラスメントの光景
井上 荒野 著
ISBN:9784022518163
定価:1980円(税込)
発売日:2022年4月7日
四六判上製  296ページ 

小説講座の人気講師がセクハラで告発された。

桐野夏生さん激賞
「この痛みは屈辱を伴っているから、
 いつまでも癒えることはないのだ」

 * * *

皮を剥がされた体と心は未だに血を流している。

動物病院の看護師で、物を書くことが好きな九重咲歩は、小説講座の人気講師・月島光一から才能の萌芽を認められ、教室内で特別扱いされていた。しかし月島による咲歩への執着はエスカレートし、肉体関係を迫るほどにまで歪んでいく――。

7年後、何人もの受講生を作家デビューさせた月島は教え子たちから慕われ、マスコミからも注目を浴びはじめるなか、咲歩はみずからの性被害を告発する決意をする。

なぜセクハラは起きたのか? 家族たちは事件をいかに受け止めるのか? 被害者の傷は癒えることがあるのか? 被害者と加害者、その家族、受講者たち、さらにはメディア、SNSを巻き込みながら、性被害をめぐる当事者たちの生々しい感情と、ハラスメントが醸成される空気を重層的に活写する、著者の新たな代表作。

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書店員の方々から感想を頂きました!


人はいったい幾つの皮を被って生きているのだろう。
この物語によってむき出しにされる真実は、人間の尊厳を根本から激しく揺さぶる・・・
理性と本能がせめぎ合った欲望の罠に支配の闇。
突きつけられた問題は決して他人事ではなく、理不尽な社会で渦巻き続ける現実でもある。
そう誰もが当事者。目を背けずに読むべきだ。
そして投げられた重たき石の波紋を噛みしめたい。
無益な誤解も痛みや哀しみのない明日のために・・・

ブックジャーナリスト 内田剛さん

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性被害というものの原理が、とてもわかりやすく描かれている。
男性の言い分。女性の言い分。
性被害を受けた女性と同じ女として男の身勝手さ、思い込みに悍ましささえ覚える。
拒まなかった、イコール同意があった。何故そう思えるのか理解出来ない。
拒まなかったのではなく、拒めなかったのだ。この言葉の違いは大きい。
挙句に拒まなかった女が悪いと言われてしまう。そもそも立場を利用して、男が手を出さなければ良い話なのに。
その「立場を利用している」事さえも、気付かないフリをしてそれが事実だと思い込む厄介さ。
咲歩の、小荒間洋子の、被害を受けた女性たちの叫びが、心から血が流れている様が伝わってくる。
癒える日が来るのかどうかもわからない傷。生皮を剥がされ、いまだ再生されないまま、血を流し続けている傷。
人を傷付けるのも人ならば、人を癒すのも人なんだな、と思いました。
俊の優しさ、理解が救いでした。
それでも事実は消えないし、この先の人生で何度も思い出す。
それらを乗り越えてあたらしい皮膚で覆われて欲しい。幸せになって欲しいと強く思いました。
性被害を受けた女性全て、救われて欲しい。
この本を読む事で、「あなたは悪くない。」ということを届けたい、伝えたい、知って欲しい。
それで傷が癒えるわけではなくても、少しでも心が救われますように。と願います。

文真堂書店ビバモール本庄店 山本智子さん

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咲歩や洋子の気持ちが伝わりすぎて、体に入ってきて吐き気がした。これを知ってる。この名前の無い感情を知ってる。日常でありがちな会話、風景、男性と女性の捉え方の違い、同性でも年齢や環境で大きく変わる捉え方の違い。世の中に実はセクハラは溢れている。ひととひとがもっと思いやれたら、ひとのことをもっと考えて言葉を発したら行動したら何か変わるのかと思った瞬間もあったけれど、いや、きっと変わらない。これは日常だと思う。この本は年齢性別問わず全ての人に読んでほしい。きっと、読んでも分かり合えないのも分かっているけれど。これは大人に必要な本です。

福岡金文堂志摩店 伊賀理江子さん

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その傷は暴力の気配を感じ、違和感を覚えた時から生まれ、暴力を受け、違う表現で必死で繕おうとし、どんどん侵食していった。セクハラを受けた当事者の心情が複雑に切実に自分の心に甦?ってくる。周りの空気の冷たさ、あざけりが現実に起こっていると思え、深く動揺し、傷をうけた。丁寧に書かれる加害者の心情にもこういうことからセクハラが起こるのかと色々考えることがあった。被害を受けた人の傷はどうしたら少しでも癒えるのだろう。暴力ではがされた皮は、新しい皮でやさしく包まれて再生することを願う。被害者、加害者、その周りの人の感情が現実にあった真実を見ているようで著者の技量、力量にうなりました。すさまじすぎる。他人事ではない誰にでも起こりえる切実な問題だ。

ジュンク堂書店滋賀草津店 山中真理さん

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痛々しいタイトルと生々しい声に読んでいて苦しかったです。
この苦しさは怒りからくるものなのだと思いました。
被害者たちよ、怒れ、立ち上がれ、鈍感な加害者をつけあがらせるな、と。
ただ、どこにでも起こりうる事件なので、自分が被害者を追いつめる立場になる可能性も考え、怒りとともにどこか冷静にもなりました

文信堂書店長岡店 實山美穂さん

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ハラスメントの問題では、被害者と加害者の考え方にうまらない溝がある。
加害者月島からすれば、たとえ告発されても小説という芸術をうみ出す上で倫理をこえた性への欲望を正当化している。被害者咲歩たちにとっては信頼した先生の行動に汚された身体に傷つきながらもそんな自分を捨ててしまう。身体の傷は治るのも早いが心の傷は何年たっても、何十年たってももしくは一生いえることはないかもしれない。

ジュンク堂書店三宮店 三瓶ひとみさん

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元編集者、小説講座の人気講師のセクハラが告発。被害者は元受講生たち。
一人の男が繰り返す「セクハラ」というものが、被害者に、それぞれの家族たちに及ぼす影響。
権力を持つ者がその権力をかざして強いる性行為。強要していない、合意の上だ、これは特別な関係なのだ、と主張する加害者。
被害者が受ける身体と心の傷は、時間が経っても絶対に消えることはない。
現実にも何度も繰り返され、話題になっては消えていくセクハラという名の犯罪。
ニュースになるとぶつけられる問い。「なぜ今頃言い出したのか」
その理由のひとつひとつが鋭い刃となって読み手を刺してくる。
生皮をはがされた彼女たちの、その皮の下にうずく生身。
痛みを知れ、痛みを感じろ、そして想像しろ、と刃を向けられた。

精文館書店中島新町店 久田かおりさん

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7年前に受けた性被害を告発する決意をする咲歩。ふとした瞬間によみがえった記憶による感情の生々しい描写に月日だけで性被害の傷が癒える事はないという事を思い知らされた。
自らを神のような存在であろうとした加害者の身勝手な言い分とそれを受容してしまう周囲の空気が息苦しい。自分もその場にいたら呑まれてしまい無自覚にセクハラに加担していたかも。またその場にいなくても告発を知った時「七年も前の事を今さら?」と安易に思ってしまうかもとぞっとした。
周囲の無理解が被害者が振り絞った勇気を踏み躙り傷が更に深く抉られる。加害者の妻も被害者でありまた加害者でもありやりきれない気持ちが募る。被害者夫婦はどうなってしまうのか?ハラハラしながら読み進めて迎えた第五章が素晴らしい!咲歩の勇気が別の被害者の勇気を引き起こす事で柔らかい光がこの夫婦を包み込むようだった。小荒間洋子のスピーチに拍手喝采を贈りたい!一緒に傷つきながらも寄り添ってくれる人がいればきっと月日で癒えない傷も癒やす事ができる。咲歩に勇気があったからこそ、夫が共に傷つき寄り添ってくれる人となり得た。赤いノートを再び手にした咲歩はこれから何を記していくのだろう。
現実社会で生きる性被害者が咲歩のように自分の人生を取り戻す事ができるように、勇気を出して声を上げた人に寄り添う人が1人でも多く増えるようにと強く願う。ぜひ多くの人に読んで欲しい一冊です。

三洋堂書店新開橋店 山口智子さん

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「嫌なら嫌と言えばいい」誰かに対してこの言葉を言ったことがある人は
この本を読んでも同じ事を言えるだろうか。
私はもう二度と言えない、と思ってしまいました。
まさに生皮を剥がされたというのがピッタリなヒリヒリした小説でした。

未来屋書店碑文谷店 福原夏菜美さん

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男の身勝手さに嫌悪感を抱き無性に腹が立った。
「生皮」読み終えて納得した。
彼女たちの深い悲しみは生皮を剝がされた様な激しい痛みと共に癒えることなくいつまでも疼き忘れることなど到底、あり得ない。
“生皮”は彼女そのものだから。

あおい書店富士店 望月美保子さん

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自分は嫌だったのだと言えることは、自分を許すことなのだろう。そこを乗り越え、告発して尚、彼女たちには戦う敵がいる。ハラスメントを告発するということはなんて命懸けなのだろうか。誰も傷付きたくなんてない。人に言えない傷なんて負いたくない。
勝手な希望と絶望に振り回されるのはうんざりだ。
彼女たちの深い傷を思い、少しでも世の中がやさしくあるようにと願います。

あおい書店富士店 鈴木裕里さん

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小説講座の講師・月島光一がセクハラで告発された。小説の指導という名目での課外授業でセックスの強要。被害女性である咲歩との間にあったものは...。洋子はあれはレイプだったという。彼がしたことは、「私の皮を剝ぐことでした。」と表現した。どれほどの苦痛であったか。想像を絶する。大人の男女なんだから二人次第ではないのかという世論。夫の俊と穏やかに乗り越えた咲歩は幸せであっただろう。声を上げられず乗り越えられない多くの女性たちが見えない鮮烈な痛みを抱えたまま自身が悪かったのではと後悔しながら生きているのだろうと思いました。Me too!と思う女性たち、月島のような傲慢な男性たちにも手に取ってもらいたいです!

ジュンク堂書店名古屋栄店 西田有里さん

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動物病院の看護師の咲歩の趣味はものを書くこと。
創作教室の人気講師・月島光一から必要以上に目をかけられ…。
七年の時が経ち、夫の俊との幸せな生活を送っているかのようにみえる咲歩。
当時受けた性被害が咲歩を苦しめ…。
告発を決意した咲歩の勇気。咲歩や周囲の人たちの叫びを悲痛な思いで受け取りました。
読み終わった後、「生皮」というタイトルに込められた井上荒野さんの想いが胸を打ちます。

丸善名古屋本店 竹腰香里さん

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とにかくずっと嫌な気分だ。人の妬み、嫉み、勝手な憶測に気分が悪くなる。なのにページをめくる手が止まらない。それは全ての登場人物に感情移入できてしまうから。でも、それはつまり、私も「被害者」だけでなく、「加害者」や、それに加担する野次馬になる可能性がある、ということだ。恐ろしくなる。この物語に救いはあったのか。私にははっきりとは分からなかった。また、この物語を「フィクションだ」と簡単には言い切ることができない。それくらいリアルで、今を感じる作品であった。

紀伊國屋書店さいたま新都心店 大森輝美さん

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それぞれの立場の生々しい感情が、さながらノンフィクションを読んでいるかのようだった。
ただ、やはりハラスメント被害は起こるべきではない。
重たい作品であるが、一人でも多くの方に読んでもらい、声なき声の被害が少しでもなくなるといいなと思った。

くまざわ書店新潟亀田店 今井美樹さん

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性被害は名乗り出ることが難しい。
その部分が痛いほど描かれていた。
本人の傷はもちろんの事、家族の傷も深く癒える事はないかもしれない。 少しずつ歩み出した彼女達の未来が明るいものになるよう祈りたい。

うさぎや作新学院前店 丸山由美子さん

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愛という名の下に行われる、搾取。聡明であるがゆえに、ゆっくりとはまり込むぬるい地獄。誰もが活躍する当たり前の社会に、こんな悲しい出来事は全く要りません。
この作品が多くの人の心に届き、一刻も早く自浄できる世の中になりますように。切に願います。

蔦屋書店熊谷店 加藤京子さん

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私の皮を剥がされた、性被害がその言葉で表されたことに強い衝撃を受けました。いつか癒える傷ではなく人格を破壊するとても卑劣な行為なのだと思い知らされました。
加害者に犯罪だという意識がない。被害者までもバッシングを受けてしまうなんて…。
性犯罪を現状や、当事者その周辺の人々の感情がリアルに描かれていて、決して目を背けてはいけない問題だと思いました。

ジュンク堂書店郡山店 郡司さん

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勇気を持って、声を上げた当事者が、まだまだセカンドレイプに逢いがちな時代に我々は生きている。そんな世の中で自分にできることは何なのか。考えることを放棄したくはないと思った。

くまざわ書店錦糸町店 阿久津武信さん

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セクハラの被害者と加害者、その家族、知人、メディアで事件を知った赤の他人…立場は全く異なるのにそれぞれの感情や生き方がリアルに迫ってきました。

文喫福岡天神 奥原未樹子さん