占領期のGHQとの交渉、経済的自立、国際社会への復帰という功績の一方で、戦後の官僚依存、対米協調など、吉田茂が残していった戦後政治の矛盾は現代にまで尾を引いている。
吉田茂は、明治の元勲たちを心から尊敬し、自らも宮廷官僚として歴史に生きることに非常に自覚的な政治家だった。彼が信じ、軍国主義真っ只中でも決して曲げなかった「日本の進むべき道」とは何だったのか。戦後最大の宰相・吉田茂の功罪と実像を描く著者渾身の大作。
目次
序章 エリート主義と庶民性
第1章 三人の父親(実父・養父・岳父)の精神とその継承者
第2章 外辺に立つ「宮廷官僚」の反枢軸路線
第3章 日米開戦前後、焦慮と敗北の日々
第4章 戦時下の孤独な終戦工作者
第5章 再生日本の守護者という道
第6章 「吉田時代」、その戦いの前史
第7章 歴史に呼ばれた政治指導者
第8章 占領政策とワンマン体制
第9章 独立の回復ともう一つの現実
第10章 老指導者の弧影、その実像
第11章 「昭和」の清算と託された歴史意思
終章 「私」と「公」、そのふたつの死
主要参考文献
吉田茂年譜
吉田茂系図