昨年12月から刊行が始まった『天皇の世紀』の普及版第五巻。幕末・維新の時代を膨大な資料を駆使して描いた、史伝文学の傑作を新たに。全10巻のうち、第5巻には「京都」「長州」を収録。各巻ともわかりやすい注解および江戸、長州などの地域別年表つき。大佛作品の集大成であるこの大著を、読者のあつい要望におこたえして、今回非常にお求め安い価格で刊行します。毎月1巻ずつ刊行予定。
東大法学部、外務省嘱託を経て作家生活に入った大佛次郎(1897-1973)は、『ドレフュス事件』『パリ燃ゆ』などの外国を舞台にした史伝、『鞍馬天狗』シリーズなどのエンターテインメント、『帰郷』などの現代小説、『赤穂浪士』などの時代小説など、幅広い分野で活躍した、戦前戦後の日本を代表する作家、知識人だった。
『天皇の世紀』は、豊富な資料をもとに、幕末・明治維新を細大漏らさず描く大河史伝。朝日新聞での1967年からの連載開始とともに、大きな反響を呼んだが、惜しくも、著者・大佛次郎の死によって、未完に終わった。とはいえ、連載回数1500余回に及ぶ発表分は、明治天皇の誕生から、江戸落城までを描く、記念碑的大作である。文庫版が品切れとなっているため、なかなか手に入りにくい状態がつづき、新たな出版を求める声が高まっていた。そこで、今回、新たに「普及版」を出版することになった。索引なども充実した、得難いシリーズである。