740円(本体価格)/814円(税込価格)
本書を読むことは、科学史を学ぶ者にとって
限りない学びと教訓をもたらすことになる
――福岡伸一氏、激賞!(解説より)
ハーバーが第一次大戦下のドイツ軍で毒ガス開発を指揮したのは、戦争早期終結のためだった。だが友人のアインシュタインからは「君は才能を大量殺戮のために使っている」と言われ、妻は研究に反対し自死。やがて愛する祖国を追われたノーベル賞科学者の数奇な生涯を描く。
【目次より】
プロローグ ―― 函館に叔父の記念碑/「毒ガス博士来朝」/避暑地の惨劇/製薬王・星の義挙/空中窒素固定法と毒ガスのあいだ
1 生い立ち ―― ハーバー家の出自/上昇するユダヤ系の人々/出生と母の死
2 挫折と苦闘の日々 ―― ビスマルク治下のナショナリズム/ドイツ文化を享受しながら/化学王国ドイツ/クララとの出会い/物理化学への扉/ビジネスの失敗と父子の相剋/キリスト教への改宗
3 陽の当たる場所へ ―― カールスルーエの自由な雰囲気/クララとの再会/結婚と長男の誕生
4 空中窒素固定法の成功 ―― 飢餓を呼ぶ窒素肥料の欠乏/温度、圧力、そして触媒/生涯のライバル、ネルンスト
5 家庭崩壊の兆し ―― 大発明を支えた人々/卓越したリーダーシップ/カイザー・ウィルヘルム研究所への花道/アインシュタインも招聘/クララに忍び寄る心の影
6 毒ガス戦の先頭に立つ ―― 「これで戦争ができる」説の真偽/動員された科学者たち/最初に手を染めたのはネルンスト/国際条約の抜け穴/「戦争を早く終わらせるために」/どちらが最初に使用したか/イープルに上った黄色い煙
7 死の抗議と第二のロマンス ―― クララの自殺/ガス放射の欠点/より効果的なジフォスゲン/ルーベンス投射機の登場/第二のロマンス/「無意味に戦争を長引かせていないか」
8 敗戦と逃亡 ―― 最終兵器イペリットの猛威/ルーデンドルフ最後の攻勢/イープルに戦う若き日の独裁者/終戦とスイスへの逃亡
9 ノーベル賞、星基金、チクロンB ―― 逆風のさなかのノーベル賞/開かれたハーバー・コロキウム/苦境に喘ぐドイツ科学界/チクロンBを開発
10 海水から金を採取せよ ―― 毒ガス戦の後処理/愛国心から生まれた奇抜なアイデア/最大の失敗研究
11 日本訪問 ―― 世界一周の旅/秘められたもう一つの目的/日本の毒ガス開発/日独文化協会の設立/星に待ち受けていた陥穽
12 報酬は国外追放 ―― 再生するドイツ科学/シャルロッテとの離婚/反ユダヤ・ナチスの台頭/ユダヤ人の全追放/悲愴な辞職願/平和時には人類のため戦争時には祖国のため
13 最愛の国家に裏切られて ―― 息子へルマンとの再会/シオニスト、ヴァイツマンへの傾斜/最愛の祖国を目の前にして
エピローグ ―― 残された人々/星基金受益者たちと「マンハッタン計画」/クララとともに眠る