620円(本体価格)/682円(税込価格)
読むことと、書くことにあけくれて暮らす著者の日常は、現実を生きている時間より、物語のなかにいつ時間のほうがはるかにながい。散歩も、旅も、お風呂も、その延長のなかにある。
掌編小説と 全身で拾い集めた世界じゅうの瑣末なものものについて書かれた文章たち。著者の創作と生活の「秘密」がひもとかれるスリリングな散文集。
「すばらしい本を一冊読んだときの、いま自分のいる世界まで読む前とは違ってしまう力、架空の世界から現実にはみだしてくる、あの途方もない力。それについて、つまり私はこの散文集のなかで、言いたかったのだと思います」(あとがきより)
目次
【Ⅰ】 書くこと
無 題
秘 密
「飛ぶ教室」のこと
パンのこと
食器棚の奥で
二〇〇九年の日記
地味な小説
運ばれてくるもの
透明な箱、ひとりだけでする冒険
神秘のヴェール
【Ⅱ】 読むこと
読書ノート
模索と判断 ―― 私の人生を変えたこの小説
自 由
マーガレット・ワイズ・ブラウンのこと
奇妙な場所
川上さんへの手紙
絵本の力
あのひそやかな気配 本たちのつくる陰翳の深さ
辞書とおなじもの ―― 『ちいさなうさこちゃん』のこと
好きなもの
ここに居続けること
代官山の思い出
ゆうべのこと
最近読んだ本
二十年目の近況報告 ―― 二〇〇八年秋のこと
この三冊
こことそこ
荒井良二さんへの手紙
窓、ロアンの中庭
物語のなかとそと ―― 文学的近況
【Ⅲ】 その周辺
散歩がついてくる
上海の雨
外で遊ぶ
所有する街
でかけて行く街
街なかの友人
弦楽器の音のこ
子供の周辺(一)
子供の周辺(二)
遠慮をしない礼儀
かわいそうにという言葉
豆のすじ ―― 作家の口福 その一
インド料理屋さん ―― 作家の口福 その二
お粥 ―― 作家の口福 その三
ほめ言葉 ―― 作家の口福 その四
旅のための靴
蕎麦屋奇譚
エペルネーのチューリップ ―― 春
近所の花 ―― 夏
なでしこのこと ―― 秋
雪の荒野とヒース ―― 冬
“気”のこと
彼女はいま全力で
あとがき
解説
小説家のなかとそと 町屋良平