720円(本体価格)/792円(税込価格)
最も意気盛んな安定期に見えて、中年ほど心の危機をはらんだ季節はない――。心理療法の大家が、夏目漱石、大江健三郎、佐藤愛子、山田太一などの日本文学の名作12編を読み解き、中年の心の深層をさぐる。本書に登場する小説の登場人物たちは、職場での自らの立ち位置、配偶者の浮気、子どもの教育、老いへの不安など、ありふれているようで本人にとっては重大な問題に直面し、戸惑い、やがて人生の大切な転換点を体験する。読者にその問題が降りかかってきたとき、どう立ち向かえばよいか。著者ならではの「中年論」。
目次
はじめに
1人生の四季 夏目漱石『門』
2四十の惑い 山田太一『異人たちとの夏』
3入り口に立つ 広津和郎『神経病時代』
4心の傷を癒す 大江健三郎『人生の親戚』
5砂の眼 安倍公房『砂の女』
6エロスの行方 円地文子『妖』
7男性のエロス 中村真一郎『恋の泉』
8二つの太陽 佐藤愛子『凪の光景』
9母なる遊女 谷崎潤一郎『蘆刈』
10ワイルドネス 本間洋平『家族ゲーム』
11夫婦の転生 志賀直哉『転生』
12自己実現の王道 夏目漱石『道草』
あとがき